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北朝鮮海軍の新鋭高速魚雷艇!?~ナルチ級VSV~


・はじめに


北朝鮮海軍(朝鮮人民軍海軍)は、現在に至るまで旧式の魚雷艇、哨戒艇、ミサイル艇等が中心のいわゆる沿岸海軍です。新しい艦船は少なく、周辺国の海軍と比較すると明らかに時代遅れの古い海軍であることは否めません。
そんな北朝鮮ですが、近年はいくつかの種類の新しい戦闘艦船を建造しています。その一つが今回取り上げる「ナルチ級VSV」です。
VSVとは「Very Slender Vessel」を略したもので、「極端に細い船」となります。訳すならば「極細艇」でしょうか。そしてナルチとは朝鮮語で「トビウオ」を意味します。その名の通り細長い高速艇ですが、その詳細は不明な点が多く、ここでは現在判明している情報を中心に取り上げていきます。


・最初の公開


2013年夏、朝鮮中央通信が金正恩朝鮮労働党第一書記が最新の戦闘艦船を現地指導した旨の報道をしました。公開された写真には金正恩が未知の艦船に搭乗する姿が写し出されています。

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北朝鮮側による最初の公開は2013年ですが、実際には前年の2012年には平壌を流れる大洞江の畔にある「大洞江船舶工場」の外に係留中のVSVが、衛星画像で確認されていました。

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・ナルチ級VSVの概要


前述の通り、真上から見ると三角形のような細長い船体が特徴です。船首から船尾にかけて幅が広くなり、中央にはマストと船橋が設けられています。船体の色はロービジ迷彩で、視認性を下げるための工夫と思われます。

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(http://www.hisutton.com/North_Korean_VSV.html から引用)
VSVは一種類でなく、サイズの異なるタイプが複数存在します。上記イラストの32mが最大で他には10m、21m、24m、29m級のナルチ級が建造されています。搭載される機関や性能は不明ですが、従来の魚雷艇と同等かそれ以上の高速性がある可能性はありそうです。推力を伝えるスクリューは2本か4本でしょうか。なお、「デイリーNK」によるとこの機関や魚雷用部品などは清津市にある「第129号工場」で製造されていると見られているようです(https://www.dailynk.com/english/kim-jong-un-orders-mass-production-of-high-speed-torpedo-boats/)

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肝心の武装は、上記イラストの32m級の場合、
・24連装多連装ロケット砲を船橋上部、船体後方に1基ずつ。ロケット砲はケーブルを介して船内から遠隔操作すると思われる。
・船橋後方に携行式防空ミサイルシステム(MANPADS)発射機を1基
・船体左右に格納式の魚雷発射管
を装備すると見られます。武装はサイズによって違いがあり、例えば2018年に金正恩が現地指導した清津市のナルチ級には船首に改良型AK-230 30mmCIWSが装備されています。このAK-230は通常の二本の機関砲ではなくAK-630に類似したガトリング砲身を備えた独自の改良型です。また船体左右に格納式魚雷発射管を装備しているのは平壌のと同一と見られ、設計は共通しているようです。

ナルチ級VSVは衛星画像で確認された2012年辺りから建造が始まり、建造場所は前述の平壌の大洞江船舶工場と東海岸の清津市の造船所の二ヶ所。現在、既に何隻かが海軍基地に配備されています。NLL(北方限界線)に近い沙串(サゴ)基地や長擶(チャンジョン)基地にもその姿が確認できます。↓

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・ナルチ級VSVの用途とまとめ


見た目から分かるようにナルチ級はステルス性を重視した設計であり、近代的なスタイルにまとめられています。他国ではあまり見られない特殊な艦船ですが、その用途が何なのかは不明です。
海軍の任務の一つとして特殊部隊の浸透支援があるため特殊部隊を乗せ、韓国沿岸に接近する支援用という可能性があります。ただ、多連装ロケット砲など支援用にしては重武装であることや、船体のサイズや公開された船内の画像を見る限りスペースは狭く、特殊部隊の輸送には不向きに見えます。またステルス船っぽいとはいえ、これで韓国に気づかれることなく沿岸に接近するのは少々無理がありそうです。
こうした点から、「ナルチ級VSVは、従来の魚雷艇を北朝鮮が独自に発展させた新しいスタイルの高速魚雷艇」と言った方がふさわしいかもしれません。
魚雷に加え、MANPADSや多連装ロケット砲、CIWSまで装備する辺り哨戒艇の要素も含めて、NLLで韓国海軍と対峙するのを想定している可能性もあるでしょう。今後も建造がされ、更に数を増やして配備されていけば、老朽化した旧式艦船に代わる新たな水上戦力の中核を担う存在になっていくのかもしれません。今後の動向には是非注視したいところです。(了)


・ナルチ級VSV スペック(推測)

全長:10~32m程

幅:5m?

排水量:不明

機関:不明

速力:50ノット

武装:24連装ロケット砲発射機×2、格納式魚雷発射管(口径不明)×2、MANPADS発射機×1(32m級VSVの場合) サイズにより武装は異なる

電子機器:KODEN製と見られる航海レーダー×1、各種アンテナ

乗員:不明

・参考文献


http://www.hisutton.com/North_Korean_VSV.html


https://www.dailynk.com/english/kim-jong-un-orders-mass-production-of-high-speed-torpedo-boats/


https://mobile.twitter.com/greatpoppo/status/656291236056137728?lang=hi

https://twitter.com/GreatPoppo/status/1115816037046476802?s=19

大洞江船舶工場の座標→38°59'00"N 125°42'31"E

清津造船所の座標→41°46'14"N 129°47'04"E

第129号工場の座標→41°47'31"N 129°44'44"E

沙串基地の座標→37°48'16"N 125°21'10"E

長擶基地の座標→38°48'10"N 128°08'22"E

朝鮮人民軍botのナルチ級VSVのツイート
https://twitter.com/KPA_bot/status/1275185228143661056?s=19

※この記事はbloggerから転載しました

https://kpajournal.blogspot.com/2020/09/vsv.html?m=1

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