![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132956544/rectangle_large_type_2_2646b872fed689c5299bc148d044ba03.jpg?width=1200)
『置き場』第1号を読んで①
『置き場』第1号を読みました。
前回からまた投稿された方々が増えていて、読み応えがすごかったです。
藤井さんの号末の評も良くて、読んでもらえるのって嬉しいんだよなとあらためて思いました。おつかれ様でした。ありがとうございます。
第0号のときはXで各連作から一首ずつ引かせてもらったのですが、今回からはnoteでやろうかなと思います。
この記事のタイトルは①ですが、②では特に印象的だった歌にまたそのうち感想を書いていけたらなぁと考えています。
↑『置き場』第1号のリンクです
以下、掲載順・敬称略で引かせていただきます。多分抜けてないはずですが、こないだ抜けあったので(申し訳ない…)何かあったらめちゃくちゃ教えてください。
------------------------------------------
たぶんそのキャベツと僕のキャベツとはもとはひとつで合体できます
ほんとうの自分で生きてみたかった舞うっていうか飛んでたホコリ
春はいい 短いけれど優しさが溢れ過ぎててツラくなる夜
美しい詩だとおもってごめんなさい わたしでさみしくなったあなたを
木曜日ターミナルへと夕暮れは 流線型に溶けて流れる
ぱっと消えてしまわないようロッカーに私物をたくさん溜め込んでいる
街灯の明かりをあまり見なくなり日の長さを知る帰り道
貸したいと言われて借りた本だから長い手紙のように読ませて
サーカスの訪れ、そしてひと晩に降る雪の嵩ラジオは告げる
勇気とは呼べないだらう真つ直ぐに生きていくのも死んでいくのも
朝焼けのレモンの黄色鮮やかにあなたのすべてがそこにあるように
人類がもしも電気を得なければ数万年後光れたの 眼は
溜まりゆく出せない手紙 在原業平にだってあったはずだよ
カーテンにうらうら含む陽光は二つ三つ咲く白梅にも差すか
詩集のひとページに栞を置くようにシェアサイクルの返却をせり
ねむり薬を今夜はふたつ見たくないなら見なくてもいい月なんて
受け入れてくれるかだけを気にかけて私を何のゴールにしたの
酔いたいよ騙し騙しの違和感かワイのシマだし未だ酔いたいよ
(よいたいよだましだましのいわかんかわいのしまだしまだよいたいよ)
公園の二つ並んだブランコはひとりで乗った記憶だけある
師走には増える寄り道まっすぐに落ちる葉はなくそのようにして
まなざすという動詞は痛い、あの浜にあの砂にめざめない結晶
お互いに被る仮面は剥ぎ取れず出したおかずが減らないでいる
ひとつだけ白の違ったブロックを踏んでる人を避けている人
ミッドナイト 泣けない夜も鳥ならば乗りこえられたかもしれないね
古着屋が潰れてコインランドリーになってたどっちにせよ行かないが
自転する星の上では罪人も失踪人も朝に灼かれる
オスカルはブロンドの髪ひるがえしわたしを乱すビル風が吹く
肺の奥で瞼が幾重にも開かれ閉じて誘蛾灯に蛾は集った
血管を空に開いて立つ木々の動脈である一級河川
責任感があるって書かれた通知表はいい紙をつかっていて白かった
慌ただしき時間のなかを子の髪に妻は螺旋を生み出してゆく
冬生まれっぽいけどなんでぽいんだろう みかん食べてもう一度泳ぐ
忍者にはとうていなれずコケているコケた場所からまた歩き出す
新宿に雨があかるい ひとりでも入れる店がいくらでもある
他人事が上手く出来ない真昼間に窓をひらけば水と土の香
金魚鉢に金魚はおらず水草の青々とあるいつか見た国
鳥類を口に入れたい 宗教の話を聴けばよりそう思う
真夜中に見た海はやっぱり怖くて誰と見ても怖いから、果て
毛先まで呪われたいま夜にもう鏡を隠すこともないでしょう
黄緑の萌芽まぶしく見あげつつその丘をあなたは越えてゆく
金平糖のとげの鈍さがねむたくてそう遠くない春の匂いだ
記憶とは泥のおとうと 春泥を心で踏めばなんども逢える
「個人的には」と毎回言うきみの気持ちが分かるから咎めない
平日のブックオフが怖かったことさざ波みたいにあなたは話す
タクシーのヘッドライトが眩しくてひっどい顔をしてたなきっと
ニラレバかニラレバ炒めか御飯食べ紅梅白梅雲々の空
入力のミスでグーグルマップにて賃貸マンションに着いてしまう
偽物になったらなったでいいじゃないレースカーテン越しの光は
近未来みたいな 2025 にまだぼくたちは空も飛べない
競争の中にいる者 復活の途中にいる者 それぞれの春
霧の朝ベランダに訪れてくる鳥の形をしたなにものか
夏井氏が斬った俳句をまた斬ってみんなで斬ってとても楽しい
降りやまぬ驟雨 あなたはリセマラを何度やっても満足しない
二月の東京はどこまでも晴れているあと少し陽が沈まぬように
人里を離れてみれば満天の星ひとり原始の声をきく
窓はその木の全身を捉えない 僕が選んだ石の冷たさ
人々が収まっていく座席からパズルゲームの気持ちいい音
夏のあといつかあなたの地層から始祖鳥として掘り出されたい
繋がれば神は神では無くなってそれもよくある神話のひとつ
並木越しの青信号ほたるみたい いつか死ぬのに認めてほしい
ジュマンジのDVDを鳥よけにして鳥たちよ飛べ宇宙まで
お医者さん静かに笑うこのひとはどんな風にお父さんなんだろう
ぬばたまの夢といふ名のうつくしい誤訳のうへに降り積もる雪
月の兎みたいなものか、遠くからみればあなたと暮らした街も
飛行機の窓に大きな空が暮れていく誰の願いも叶ってほしい
でも君は返礼品も迷わずにカロリーメイトしかも二回も
春らしい日は春らしくいなければバナナチップス探して歩く
飛行機を乗り過ごしたらそのまんまタダで連れてかれる知らん国
消音で笑う完成予想図に閉じ込められたような街並み
会うという不思議さあなたのあくびすらふるえるような真実になる
8日 図書館であなたが返却した本は全てが聖書 あは、いい匂い
雪のない冬に出会った距離のまま言葉に花が混ざりはじめる
二番目の運命だけが選ばれるそういう運命飽きたよ泣泣
(泣泣に〈えんえん〉のルビ)
喩えよう、勝手に生えた植物を安いジョークで溢れた日々を
眠れぬ夜タイムラプスの瞬きがアンモナイトの記憶とともに
------------------------------------------
以上です。
晩冬から春にかけての歌と、前回より場面設定のくっきりとした連作が多かった体感があります。またじっくり読めていけたらと思います。ありがとうございました。
🪿