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「置き場」第2号を読んで①
「置き場」第2号を読ませていただきました。
藤井さんの人生、応援しています。カルフォルニア檸檬さんの巻末評も興味深く、楽しく拝読しました。お二人ともお疲れ様でした。
今回も一首ずつ好きだった歌を引かせてください。おおよそ掲載順、敬称略で失礼します。
毎度で恐縮ですが何か不備があったらお知らせください。
ちなみにわたしは今回出していません。お休みできるのもいいところ、こと「置き場」。
↑「置き場」第2号リンクです。
公園に響くひろき!が名ではなく場の面積を指す可能性
人それぞれが造花のように柔らかく闇の奥へと溶けてゆくのみ
脱いでから風呂をはさんで着るだろう夜をはさんでまた脱ぐだろう
われからのミモザと聞きいし父の言う「コート片せよ」の柔らかさ
龍の棲むらしい湖さざめいて冷たい水は気持ちいいよね
佐用霧で霞んだ前を懸命に手探りでゆく通学路 春
似たような孤独と信じて寄り添っていらない奇跡にあたためられて
焼く堂宇恋せる乙女火を見つつ身を秘め通る晴耕雨読や
(やくどううこいせるおとめひをみつつみをひめとおるせいこううどくや)
瞬間に見ていた夢は消え去ってナントカって言う俳優だった
「黒柳徹子は変わらない」そうね、あれは幻想 飴をあげるわ
歌わない方のカラオケだったけど一緒にタバコ吸えてよかった
地下鉄の出口をのぼるとき気づく春の兆しは肌色なのか
賢くてとても冷たい長身を生きながら血は血を遡り
ときどきは誰かがなにかしなければ森ではなくて庭なのだった
早押しクイズの答えにならないで ふたり乗り宇宙船売切れ
怖いのは僕だけじゃない列車との隙間が広いホームに降りる
死んだあと天国と地獄の真ん中のあたりで街を作るから来て
綺麗事にして終わらせるのならば返してくれる?三十五円
想いつつ、隠し通せる覚悟はなくて伝えられる勇気もなくて
スペードのエースの柄の刺青を想像上の太腿に彫る
ナジュらないナジュるで揉めるJKがお互い譲って減らないポテト
さかむけのように切り立つ言語野よ いまあかるさへ放てかれらを
まっしろい髪をさらしてシーサイドさせないあなたを神さまになど
最下位はうお座のあなた 外出は控えた方が世の中のため
絶景の空き地に何かが建っていく私は地図を描き換えていく
投稿のレシピのひとになにかしらあったのだろう 強めの弱火
ねえ姉さん わたしがいもうとだってこと知ってたのかな水色のタイル
夜らしい夜は頭が騒がしいそれをわたしが真上から見る
命拾いする事もあり、そうでない事もあるのよ、覚悟するのよ
朝になればまたきらめきを探すだろうはなむぐりみたいな一途さで
真夜中の深草を経て幽霊を乗せた話を聴き晩飯に
たっくんの戴冠の日を待ちわびて春やわらかにめぐりておりぬ
名残り雪どさりと落ちる 出戻って姉はまえより父にやさしい
会ひたくて走りだしたら風景もなづきのねぢも消え失せてゆく
朝露の玉を葉先に光らせて平行脈が低空をさす
父さんに「くるま買った」と LINE して GOOD JOB だけのスタンプが来た
何ごとも力尽くは駄目という戒めを新人にも国家元首にも
どの花も 散る もしくは降るとしてわたしのために怒ってくれる?
世界地図柄のハンカチに包んでハムスター持ってきちゃだめだって
善悪の話はとてもまぶしくて表情はその逆光のなか
青い火は熱いと言った先生は知らないうちに死んでいた 湯冷め
さみしさの量は減るのか増えるのか うるう日告げる手帳を閉じる
夏のこと考えている エビチリに喜ぶわたしを見ていてほしい
小舟にはこんぺいとうとあめだまをゆくべき場所も知らないままに
眩しさにそむけた顔に追いすがる春の西日はうまれたばかり
怪我人も出さずに終わった闘い後チョキをかかげてピースサイン
雪も雨も降るものだから 入浴剤いれてもいれなくても いれようか
どこへでも行けるどこへも帰れない睫毛が重くなる 眩しくて
今まで乗ったすべての電車 喧嘩したすべての乗客 深く眠って
青緑色した庭に囲まれて子供は混ざりあって転がる
〈フォーゲルパーク〉のルビ
うつすらとあなたの部屋に寄り道をしてきたやうな風だと思ふ
ぼくたちが物語ならぴかぴかの13月に終わるのだろう
茶畑の脇でキャッツアイになるばあちゃん、新芽を摘んで早足
チケットのヒスイカズラの鮮やかさ 作りものみたい。という褒め言葉
言葉へと羽化できなかったため息をひとつ夜空へかえしてあげる
ややもすればより奥深くビー玉のとほざかりゆく局面もあり
点滴を眺めて過ごす再春館製薬の人になった気持ちで
言へなくてしじまにひびくしづり雪 こゑなきこゑにふと紅椿
土は蓋 発さなかった言葉から芽吹いて大樹のような皺の手
笛を吹く風を私は知って居る上弦の月が雲に囲まれ
無意識に布団を取り合う三センチ隙間の冷気肌は白旗
わたし今さら春をそんなに嫌えない聞いてもらいたい神話もない
「ねえパパ」とあとどのくらい呼べるかな 「ん?」ってあの顔してくれるかな
差し出してもらった君の手を握るための孤独と今ならわかる
来てよって降る花びらの赤いこと あなたと出会い直したかった
十年と呼んだ大事な約束の、いつも呼ばれていた青い春
それ以来風はどこへと渡るのか彼はどこかへかえってるのか
味付けはせんでええんですあの人はもう笑ってくれへんのやから
以上です。やっぱり春のモティーフと、あとは記憶にまつわる歌が心なしか多かったように思いました。
来月は出せるようにしよっとと思ったけど、もう今月だしあと10日で締め切りですね。やばい。
今回も感想は次の記事に書かせてもらいましたので、もしよかったらよろしくお願いします。
読ませてくださりありがとうございました。🪿