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2020.12.29 ふくよかなドーナツ

 褐色のひび割れた表面から香ばしく甘い香りを放つ、オールドファッションドーナツにかじりつき少し冷めたコーヒーで流し込む。その無作法な感じとか、何か作業をしながら片手で放り込んでいく感じが心地よく、私にとってコーヒーといえばドーナツ、ドーナツといえばコーヒーと信じて生きてきた。チュロスをドーナツと言わせていただけるのなら、ドーナツ屋がほとんどないパリに住んでいたときでさえも週に2度はマルシェで揚げたてのチュロスを6本買い、3本は歩きながら、残り3本は家でコーヒーと一緒に食べていた。アメリカにいけばドーナツ屋をめぐるし、新宿にいけばミスタードーナツをのぞいてしまう。まさにドーナツジャンキーだ。
 そんなドーナツ、映画やドラマの中ではとにかく雑に扱われる。ツインピークスではキッチンペーパーの上で大量に並べられ、ルーキーではクリント・イーストウッドが車の窓から箱ごと放り投げるし、ブギーナイツではドーナツ屋で殺し合いがはじまる。ところがどんなに雑に扱われてもドーナツの魅力は減るどころか増してしまうのだ。個人的に最もドーナツが魅力的に映るのはフルメタルジャケットのワンシーンだ。海兵隊の訓練中に鬼教官ハートマン軍曹に隠し持っていたドーナツが見つかった青年。連帯責任をとらされた他の隊員たちが罰として腕立て伏せをしている中、一人立ってドーナツを頬張ってしまう。本当に罪な食べ物だ。
 切れ者のFBI捜査官やアイロンマンまでハードボイルドな男たちがうっかりキュートな一面を見せてしまうのがドーナツなのだ。

Youtubeでフルメタルジャケットのシーンを見つけたのでリンクを貼っておく。
https://youtu.be/drPxfc9Z3Fk

#日記 , #エッセイ , #映画 , #ドーナツ , #コーヒー , #ツインピークス , #フルメタルジャケット


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