プラットホームの"経済性"
Executive Summary
i. "経済性"は、スタートアップの生死の境界線
ii. 「ドライバー」→「経済性」→「スケール」の順
iii. eコマースの"経済性"物差し=Unit Economics
ⅳ. 実践: Unit Economics改善の3つの「落とし穴」
1. えっ、維持にもお金かかるじゃん!
2. むむ、顧客コホートで100倍違う…
3. あれ、改善したのに…また悪化?
i. “経済性”はスタートアップ生死の境界線
Paul Graham(Y Com) のファーストクエスチョン
If the company is default alive, we can talk about ambitious new things they could do. If it's default dead, we probably need to talk about how to save it. We know the current trajectory ends badly
経済性が合ってない“Default Dead”へ警鐘を鳴らす
Premature scaling is the most common reason for startups to perform worse. They tend to lose the battle early on by getting ahead of themselves. Startups can prematurely scale their team, their customer acquisition strategies or over build the product.
スタートアップのよくある死因に、経済性を無視した早熟なスケールが上がっている
ii. いつ“経済性”と向き合う?
Michael Seibel (Y Com) によるとアーリーステージは早すぎるらしい…
一方で、Paul Graham(Y Com) によるとレイトステージは遅いらしい…Y Com Partnerの統一見解を求めたいところであるが、私なりのスタンスは
「ドライバー発見」→「経済性」→「スケール」の順
"経済性"はドライバーの後、スケールの前
1. Growth Driver発見に没頭 (経済性は無視)
2. 経済性を合わる("Premature scaling"しない)
3. アクセス踏んで、一心不乱にスケール!
iii. eコマースにとっての"経済性"
eコマースは顧客単位の"経済性"=Unit Economics
"経済性"の視点・事業単位の経済性 (PL Economics)
→ 指標:損益分岐点、利益率
"顧客単位"の経済性 (Unit Economics)
→ 指標:Pay Back Period
Unit EconomicsはSam Altmanのブログに勝るものなし!繰り返し読んで理解を深めましょう!
This is particularly common in startups that don’t pass the Peter Thiel monopoly test—these startups seem to have to spend every available dollar on user acquisition, and if they raise prices, customers defect to a similar service
Unit Economicsは競争優位を考える上でも大事!
ⅳ. エコノミクス改善の実践編
頭でわかっていても…失敗談を交えて、いざ実践!
ユニットエコノミクス: PayBackの定義
Pay Back Period= CAC / (MRR x Gross Margin)
* CAC : Cost Per Acquisition 顧客獲得コスト
* MRR : Monthly Recurring Revenue 月間顧客単価
定義はOK。あとは計算して、改善するだけ?あま~い!
エコノミクス改善の“落とし穴”
1. えっ、維持にもお金かかるじゃん!
2. むむ、顧客コホートでまったく違う…
3. あれ、改善したのに、また悪化してない?
1. 真のコスト=獲得(CAC)+維持(CRC)
まず陥るのが「手離れの罠」。MRRを維持・増やすために、既存顧客へのマーケ投資が続くケース
担当:「PAYBACKが12か月を切りました!」
Head:「おお!遂に!!どうやって改善したの?」
担当:「月次クーポンが、リピートに効きました!」
Head:「え?CAC+クーポンで計算してみたら?」
担当:「PAYBACKがむしろ長くなってました…」
Head:「維持コストをかけ続ける施策はやめよう…」
獲得エコノミクスが良い事業は、維持コストが高い(手離れが悪い)傾向にある。お金をかけずに定着する顧客エンゲージメントはスケールの前に確立しておきたい
2. 顧客コホートの「デ・アベレージ」
次に陥るのが「平均の罠」。平均だけを見て「分布(ばらつき)」を見ない落とし穴です。平均に捕らわれないで、分布をみにいく手法が「デ・アベレージ」
顧客によりMRR分布は大きく異なり、"絶対に" エコノミクスが合うコホートと合わないコホートが存在
顧客属性によるMRR分布(実例)
担当:「PAYBACKが12か月を切るなんて無理!」
Head:「MRRをデ・アベレージで分析したら?」
担当:「属性によって100倍違いました…」
Head:「新規獲得はどの属性が伸びてたの?」
担当:「MRRが一番低い属性1でした…」
Head:「属性3の獲得チャネルをみつけよう!」
エコノミクスが合う顧客コホートを特定し、そのコホートを獲得するチャネルに絞ることが改善の近道
3. スケールはエコノミクスの味方?敵?
最後の罠が「スケールの罠」。エコノミクス改善後、スケールすればと大丈夫と安心して悪化を招くケース
スケールにより"改善“: 味方
・利益:規模の経済、経験曲線で低減
スケールにより“悪化“ 敵
・獲得コスト: ファーストアダプターを獲りきり増加
・維持コスト: 新規競合との奪い合いで増加
・MRR: 市場浸透とともに価格競争が始まり低下
スケールは利益の味方ではあるが、敵になることもある。Uber vs. Lyftは「スケールすれば、エコノミクスが合う」という神話に終わりを告げるかも
Uberのユニットエコノミクスの推移
最後に
拡張性ある"経済性"
スケールしても、高い経済性を維持できるメカニズムを創りきること
成長ドライバー(アクセル)を発見して、資本(ガソリン)があれば、アクセルを踏みたくなるのはヒトの心理。そこで立ち止まって、経済性(燃費)とその拡張性の整備は怠らない!
"経済性"は総合力
"経済性" はマーケティング、プロダクト、サプライチェーン、オペレーションのすべてがドライバーなる事業の総合力を測る物差し。事業家(BizDev)は売上高だけではなく、"経済性"も背負える存在でありたい
おまけ: The Leaky Bucket Theory
お水を「顧客」に、バケツを「事業」に例えて、ユニットエコノミクス/ライフタイムバリューの大事さを説くアナロジー。
economic の語源は οικονομίαに由来。οικος は家を意味し、νομος は管理。「家の管理」という意味らしい。家と事業の整備には、「漏れないバケツ」が不可欠ということで今回はお終いです
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