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2024年抜群に面白い番組「白と黒のスプーン」:感想やビハインドなど

ドラマよりもリアルバラエティやサバイバル番組が面白いと思う今日この頃。10月8日に最終回が放送され、韓国では大人気の番組「白と黒のスプーン」。

日本ではそれほど話題になってない感じですが、韓国国内では、今一番熱い番組といわれています。
連日、テレビやインターネットには、番組に出場したシェフたちが登場し、収録当時の話を語るなど、まだまだ話題がつきそうにもありません。

100人の料理人が優勝賞金3億ウォンを目指すガチンコバトル

100人の内訳は、著名な料理人20名。彼らは「白いスプーン」という高い階級に属します。
残りの80名は若手料理人や隠れた名手ともいえる市井の料理人で「黒いスプーン」という低い階級にあらかじめ決められています(彼らはスタジオに来て、はじめてそれを知るのです)。
しかも「黒いスプーン」は本名を明かすことができず、個々の特性を表すニックネームでバトルに参戦することになるのです。勝ち残ることで本名を明かすことが出来るという酷な設定。開始早々バトル感バチバチなのですが、この設定のため数々の名勝負が生まれたといえるでしょう。

審査員は2名。
一人は国内外で20種類の外食チェーンを経営、フランチャイズの合計は2700店という外食産業界の帝王、有名料理家ペク・ジョンウォン先生。
もう一人は、韓国唯一のミシュラン3つ星レストラン「モス」のアン・ソンジェシェフ。
すべての料理人たちの尊敬を集める二人がバトルの命運を握っているのです。特にアン・ソンジェシェフの厳しさが緊張感を与えていてすごくいいんですよね。

スプーンの色の意味

ここで、番組名の「白」と「黒」について少し考えてみたいと思います。
韓国ドラマの人物設定には、金持ちかそうじゃないかということが常に入ってくるように、韓国は裕福だとか特別なコネがあるとかということが、それはそれは重視されている社会です。

そして、この金持ちかどうかの話は、生まれた環境にまでさかのぼります。
実家が裕福な人は「金のスプーン(금수저)」をもって生まれたと言われます。親からの経済的な支援や豊かな教育環境で育ち優秀な人も多く、一生食うに困らない苦労しない人生。その反対は「泥のスプーン(흙수저)」と言われ、カネもコネもなく、自分の力で生きていかなければなりません。

じゃあ、金のスプーンと泥のスプーンなんじゃないの?という話もあるかもしれませんが、さすがに直球過ぎるし、実際に食べる番組なので泥はないだろう、ということでしょうか。
また、韓国語で「泥」は흙、「黒」は흑と書きますが、読んだ時の音がどちらも「フク」なので、じゃあ、白と黒にするかって話になったのかなあと思いました。

熱狂的な人気を集める理由

●番組構成の巧みさ~階級分け~

まず、参加者を「白」と「黒」に分断するという、現実社会の息苦しい構造を番組に持ち込んで参加者にストレスを与えているところ。視聴者もちょっとストレスを感じてしまかもしれません。
参加者の一人は「ここで、そこまでしなくても」という発言をしていました。エンタメの世界では、現実から解放されて楽しもうと思っていたシェフたちの気持ちはしょっぱなからぶち壊されます。
逆に「やってやろうじゃないの」と奮い立つ参加者もあり、この先の「黒さじ」の展開に視聴者としては期待してしまうのです。

●公正性と明確な審査基準

そして、審査方法が独特で、ある回では「ブラインド審査」が行われます。審査員が目隠しをして、料理だけを審査するのです。誰の料理か全く分からず、味と匂いだけで審査するので、「白さじ」の大御所が脱落したりするんですね。これは、審査するほうも相当なプレッシャーに違いありません。
公正な審査が行われる体制のもと「黒さじ」の活躍で大逆転が実現されていくところに視聴者は喝采してしまうのです。

また、審査基準が明確なところも良かった。ペク先生とアンシェフはお互いの方向性が違うことを分かっているので、あらかじめ審査基準を決めておきます。
主観や好みによる味を公正に審査するのは難しいこと。どうやっても誰かに消化不良が残りそうですが、基準が明確に示されているので、番組に対する不満が残らないところも気持ちよかった。

●白さじにも愛のある演出

階級闘争とはいえ「白さじ」も必死に技を磨いて今の地位を築いた人たちであり、悪役ではありません。「白さじ」を単純に上位世界の人間として扱うわけではなく、大御所たちがここに至るまでのストーリーを丁寧にくみ取って演出に挟み込んできます。特に、アメリカ人のエドワード・リーシェフのストーリーは心をうちます。このあたりはぜひ本編をみてください。

●魅力的すぎる出演者たち

白さじであれ黒さじであれ、ここにいる100人は一般人。しかし、そこは真剣勝負の100人。どの人も個性的で本当に魅力的なんです。

‐「トリプルスター」
1つ星から3つ星レストランまでファインダイニングで経験を積んだシェフ。若手の中でも実力が抜きんでおり抜群のリーダーシップ。しかも美男なのがずるい(笑)。

‐「料理する変人(トライ)」
人相が悪くて(ごめんなさい)見た目チンピラだけど、料理への情熱は誰よりも熱い!回を重ねるごとに魅力があふれ出す変人(トライ)。見終わる頃にはみんなトライの虜。

‐「ナポリマフィア」
ソウルで人気の生パスタのお店を運営。フライパンの上で踊るリゾットは忘れられない名シーン。コンビニ対決では極上のデザートを披露するなど技とアイデアが光る!気合入ってます!
ちなみに、ナポリマフィア(나폴리 맛피아)の綴りは、「마(マ)피아」が「맛(味マッ)피아」になっていちょっとダジャレ。

‐「岡持ち料理人(鉄カバン)」
ソウル西村で中華料理店を営む鉄カバンさんは、楽屋で競争相手たちにビタミンドリンクを配ったり、腰が低くて本当に性格が優しい人だそう。「料理する変人」からは脱落して一番惜しかった人と言われ、また優しすぎてバトル番組に向かないとも言われました。

‐「漫画男」
料理を漫画で覚えたという漫画男さんは専門的な料理教育を受けていないので、少し周囲に気後れしているようにも見えます。しかし「美味しんぼ2巻25頁のトンポーロー」を作って合格したり、見せ場を作ってくれます。

まだまだ書ききれない、魅力あふれるシェフたちが登場しますが、番組出演後、シェフたちのお店は大人気で予約困難なほど大繁盛しているそうです。(^^)/

↓番組で仲良しになったという「トリプルスター」と「料理する変人」のインタビューがここから見れます。

ビハインド~出演を決めた理由

黒さじたちは、外食産業が苦しい状況にあるので、お店の宣伝になると考えた人が多かったようです。それよりも大きかったのは、繰り返される日常に何か刺激を求めていたとか、冷めてしまった料理への情熱を取り戻せるかもしれないと思った、という理由。
好きなことを職業にして、自分のお店をもっているシェフたちでさえ、会社員と同じような気持ちを感じているんだなあと思うと、より一層彼らへの共感の気持ちがわいてきます。

一方、白さじにとって、負ければメンツがつぶれるだけなので、番組に出るメリットはなさそうですが、点心の女王チョン・ジソンシェフは新しいチャレンジなると思って出場を決めたそうです。探求をやめない姿が素敵です。
中華の超有名料理人ヨ・ギョンレシェフは、勝っても損、負けても損だと思ったが、料理界の盛り上がりや後輩たちへのメッセージになると思って出演したのだという。いい話だ。。。

つまり、この番組は気持ちのいい人ばっかり出てくるんですよね。。。企画した番組制作陣も素晴らしいと思います。

終盤は自分の名前をかけた戦いに…

最初のほうこそ、階級を強く意識した戦いを繰り広げるのですが、途中からは徐々に階級よりも、自分の名誉をかけた戦いになっていきます。
見ている側としてはもう、3億ウォンが誰のものになるのかが、あんまり気にならなくなってくるんですね。

バトル番組として見始めたのですが、終わってみれば、料理でつながった100+2人のヒューマンドラマを見せてくれた全12話。すばらしい番組でした!!

鉄カバンさんの後日談

まだまだ話題が尽きない10月11日のこと。
「岡持ち料理人(鉄カバン)」さんが、ある街頭インタビューに突然登場して、驚き&笑ってしまったことがありました。

それは、ノーベル文学賞の受賞者となったハン・ガン作家(本当にうれしいニュース!)の受賞を喜ぶ市民として、鉄カバンさんが登場するんです(笑)

ハン・ガン作家の運営する本屋の近くに鉄カバンさんのレストランがあるので、近隣住民の感想として偶然インタビューされたようです。

こんなところにひょっこり登場して、しかも鉄カバンさんの本名がイム・テフンであることを知り(※韓国のニュースではインタビューを受けた一般市民もフルネームでテロップが出る)、番組ファンは笑ってしまったに違いありません。

このタイミングでここに出てくるとは何かもってるとしか思えない。鉄カバンさんのお店にも、今度韓国に行ったら行ってみたいなと思ったのでした。。。

↓ここからそのインタビューが見られます。1分38秒頃。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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