眠らない街
眠らない街『歌舞伎町』
たくさんの繁華街がある日本において、異質な雰囲気を持つ街。
私は歌舞伎町に救われた。
この世に生を受けて今年で23歳になるわけだが、ハードモードな人生が板についてきた節がある。
3年ほど前、生まれて初めて家も金も友達も失った。
男を見る目がなかった。
もっと言えば他人を見る目がない。
よく男運がないなどとほざく女がいるがそれは間違いだ。
男を見定める眼が曇っているかそもそも無い。
例に漏れず私もそのパターンである。
全てを失った私は身一つで稼ぐ以外の方法を知らなかった。
“よし。ちんこしばこう。”
かなりあっさりと決心がついた。
風俗嬢になってみて衝撃を受けたのは、世の中の男性が予想のはるか斜め上をいくレベルで拗らせていたことだ。
人間の排泄物に興奮する性癖をお持ちのお客様にきっかけを聞いたことがある。
中学校の担任の先生。
不覚にも排泄物を教室内で漏らしてしまった時に、優しく下着を洗ってくれた女性教師に興奮を覚えた。
なんと。
ここまでくるとなにがきっかけで、そんなことになってあんなことになってしまうのかもうわからない。
もしかしたら私も誰かの性癖の扉を開く鍵になっているのかもしれない。
きっと一般的な感覚の方からしたら“気持ち悪い”と思われるだろう。
でも私は面白いと思った。
そりゃ1日に何人もの人間と肌を触れ合っていたらしんどいこともそれなりにある。
許せない言葉や、怖い体験もした。
でも私には金が必要だった。
高給取りという理由だけだったら家を借りた時点で辞めていたと思う。
でも私はその後も風俗嬢の道を選んだ。
天職だと思った。
他人が自分を必要としてくれている。
求められているのがダイレクトに感じられる。
承認欲求おばけにとってはこれ以上ないくらいの素晴らしい仕事だ。
世間から見る夜の世界は、薄汚くて悲しくて残酷なものだろう。
中にはそんな気持ちで必死に仕事をしている方もいる。
だが私のように人生のどん底から救われたと思っている人間もいるのだ。
ありがとう歌舞伎町。
今日も歌舞伎町の朝はカラスだらけだ。