話題のチャイナ側露専門家の記事に関する雑談(特に重要な内容は無し)
下記の東野先生のnoteについて、中川コージはどう思ってる?的なポストをみたので少し反応しておきますと、主たる東野先生の解説&主張については「なるほど、勉強になる。それに、チャイナ教授氏の国際関係論領域の主張が日本のアカデミアの先生方の間でも真っ当なかたちで話題になるなんて、SNSは時代を変えてるなぁ」というものです。
んで、その本筋とは別議論として、チャイナに関するいくつかの論点、見解を挙げときます。
チャイナ当局の馮教授に対する取り扱いについては、下記のポストが僕の見立てです。予てよりトラック1.5やアカデミア言論を国家戦略的資源として扱っているチャイナ当局の意思が、馮教授の過去からの一連のムーブにも当てはまることは明確です。(馮教授は北京中央のパペットではないが、北京中央の意思ものとで、黙認されているか積極的に背後から働きかけられている。)
チャイナの対宇露戦争に対するスタンスは予想外の「中東不安定化ファクター」を除けば、これまでとさほど変わりません。
発生当初
約1ヶ月後
約1年後
確かに、チャイナにとって「対米対立コンテキスト(≒両岸問題解決ファクター)」を背景に欧州先進諸国を味方につけたい動機から、欧州全体へのリーチは過去数十年から今に至っても重要であるものの、宇露戦争による局所的流動化(欧州の地政学的不安定さ増加と産業経済力の相対的没落)によって、チャイナ主観では欧州への急速な資源投下の優先度が下がりました。
この数十年の北京中央は伝統的に「不安定さ(riskではなくuncertaintyという意味←この違いは重要)」を特に嫌う傾向があるので、不安定になっている地域への資源投下は忌避されます。
これはチャイナの対欧州外交の価値が絶対的に下がったという話ではなく、対別地域への外交資源展開の価値とコスパが相対的に上がった(対欧州アプローチの価値が相対的に下がった)ことを意味します。
その意味で、チャイナは、対欧州外交すなわち対欧州経済浸透工作を主軸にした対欧州諸国へのバーゲニング・パワー増加のためのムーブ(貿易の拡大・直接投資の拡大)は当然ながら引き続き拡大傾向を続けるものの、その速度は若干緩慢になっていて、その他地域(ASEAN(特にミャンマーインドネシアetc.)、アフリカ、南太平洋、南米)、その他領域(サイバーや深海はともかく、特に宇宙)への資源投下展開スピードが増している状況とその進展度合いを観測しておくことが重要だったりします。
そんなわけでありまして、(地域大国ではなく、超大国をこえて宇宙覇権国を自認し始めている)チャイナにとってはあくまでもone of themの欧州対応ですので、どこの他地域へのアプローチが活発化しているのかも含めて、対欧州アプローチを相対化してみるのは重要なのですよね。
(※余談:チャイナは内政不安定化地域に、そのスキをついて影響力工作を仕掛けそう、と考える方も多いようなのですが、実はまったく逆です。例えば直近過去数年間のタイやミャンマーがそうであったように、内政不安定化になればチャイナが影響力工作を仕掛ける蓋然性が下がる、というケーススタディがあります。転じて、日本も革命レベルの内政不安定化になればチャイナの影響力工作を排除できるという悪魔の禁じ手があるんですが、それをやっちゃったらオシマイで、という話)