
木皿泉『昨夜のカレー、明日のパン』
数年前、NHKのBSで連続ドラマになったので、
ご覧になった方も多いと思う。
原作はベースは同じだが、
ドラマにしかないエピソード、原作にしかないエピソードがあるので、
原作を読んでいない方は是非 読んで頂けたらと思う。
7年前に若くして病気で亡くなってしまった一樹。
その妻のテツコは、一樹が亡くなった後も、そのまま義父と一緒に暮らす。
淡々とした日常の日々の中で、テツコの現在の恋人や、隣の家の家族、
一樹の従兄弟、テツコの友達などとの関わっていくエピソードが
描かれている。
また既に亡くなっている義母と義父の昔のエピソードもある。
読んでいくうちに、本の題名となった
『昨夜のカレー、明日のパン』の意味もわかる。
ゆっくりと 日常の日々を過ごしていく中で、
テツコも義父も、一樹の死を受け入れていく。
この本の中には、いくつも気に入った箇所があるのだが、
台風一過の今日のような日は、いつもこの箇所が思い浮かぶ。
「台風はそれたとは言え、風はまだまだ強かった。(中略)
黄緑色の何かが、風に舞って飛んでゆくのが見えた。
よく見るとプラスチックの子供用の虫カゴだった。(中略)
テツコは、虫をとらえるはずの虫カゴが空を飛んでゆくのを見て、
わけもなく気持ちが明るくなった。
虫カゴは意気揚々と飛んでゆく。」
虫カゴは、虫の自由を奪ってしまう檻だが、
その本来の唯一の役目を果たすことから解放されて、
自由に大空を飛んでいくという描写が好きだ。
今日も風に舞って、青空に虫カゴが飛んでいくのが見えた気がして、
私もテツコのように、わけもなく気持ちが明るくなった。
読んで下さって、どうもありがとうございます。
10月になりましたが、まだまだ暑かったり急に寒くなったりと、
なかなか気候が安定しないようですので、どうぞご自愛下さい。
よい毎日でありますように (^_^)