大切なチョコレートの箱
こざるちゃんが 明るいミントグリーンの箱を抱えてきます。
「あれ? そのチョコ、どうしたの?」
「とびきり美味しい フランスのチョコレートだよね?」
こざるちゃんが ニコニコしながら、箱を開けます。
「んん?」
「あー、りこちゃんのメモ!!!」
箱の中には、たくさんの紙切れが入っています。
以前、りこちゃんが書いたメモです。
「この箱に入れたんだ。」
こざるちゃんが言います。
「りこちゃんが書いたメモ、とっても大切だから、この美味しいチョコの箱に入れたんだ。」
りこちゃんは、もう字を書く事はありません。
大したことがないメモ書きでも、大切なのです。
「その箱も 中のチョコレートを食べた後、とても綺麗で捨てるのが惜しいってとっておいたんだもんね。」
「両方とも捨てられずにとっておいた大切なものだから、ぴったりだね。」
皆、うんうん頷きます。
「りこちゃんのメモ、他の人にとってはゴミだけど、ぼく達には宝物だよ。」
「もう手に入らないからね。」
りこちゃんは、ノートにきちんと書くよりも、パパッと その辺の紙切れに書くことが多くて、
レシートの裏や、広告の裏など、紙切れも様々です。
書いてあることも、その日の天気や気温、買ったもの、どこどこへ出かけたこと、
食べたもの、テレビで見た健康法、ちょっと詩的な言葉、本の感想など様々です。
「愚痴もあるよー。」
「そうそう、りこちゃん、こんなこと思ってたんだーってね。」
皆、うんうん頷きます。
一緒に暮らしていても知らなかった りこちゃんが この紙切れに書かれています。
きっと今は、多くの人がTweetで 吐き出しているようなことなのだと思います。
「誰もが こうして自分の思いを 外に出したいと思っているんだよね。」
「悩み相談でも、よくノートに書き出してみるといいって言うよね。」
頭の中でグルグル考えていること、思いなどを書いて出すというのは、
ごく自然なことなのだと思います。
「特に愚痴なんかは溜め込むとよくないって言うしね。」
「そうそう、愚痴こそ、心の中に溜め込まないで、外に出さないと….」
「溜まっていって、いつか破裂しちゃわないようにしないと。」
皆、笑いながら、うんうん頷きます。
「この ちょっと詩みたいなメモも、そのうち まとめて こっそり発表しちゃおうか?」
「うん、そうだね。」
「そうしようよ!」
「さて、今日の おやつ、何にする? 」
「エクレアがあるよ!」
「わーい!」
「りこちゃんに そろそろおやつだよって言ってくるね。」
こざるちゃんが鼻歌を歌いながら、りこちゃんの部屋へ向かいます。
「りこちゃーん、そろそろおやつの時間だよ! 今日はエクレアだよ! 一緒に食べよう! 」
こざるカフェは、今日も ゆっくりゆっくり
のんびり 穏やかに時間が流れていきます。
読んで下さって、どうもありがとうございます。
気温も気圧も大きく変動する毎日ですが、どうぞ皆様、無理なさらず ご自愛ください。
よい毎日でありますように (^_^)