もし1万円昇給したらあなたは嬉しいですか?

もしあなたが30㎏の重たいバッグを背負っているときに、誰かがこっそり後ろから500gの重りを乗せたとします。しかしそのことに気付く人がどれほどいるでしょうか。ところが、1㎏のパソコンと1.5㎏のパソコンを持ち比べたら、明らかに1.5㎏のパソコンのほうを重たいと感じることでしょう。

人は単体での絶対値ではなく、なにかと比較した相対値でその変化に気付くのです。それは商品価格や給料であっても同じなのです。


人は変化を知覚する

人間の脳は絶対値を知覚するのではなく、変化を相対的に知覚します。それは物理的な特性のすべてに当てはまります。

例えば時速30㎞でゆっくり走っていた車が、もう30㎞スピードを上げて時速60㎞で走り出せば、流れる周りの風景はガラリと変わります。ハンドル操作は慎重になり、いつでもブレーキを踏めるよう準備をするかもしれません。しかし、時速100㎞で走っていた車が、時速130㎞にスピードを上げてもそこまで運転操作に変化はないでしょう。

つまり、いくらスピードが上がったのか、重さがどれだけ増えたのかではなく、現在の水準と比べてどれだけ変化したのか、その割合が重要なのです。

だから500万円の自動車を購入するときに、3万円のオプションを付けるかどうか選択するのにはそれほど迷わないのに、スーパーで卵を買うために100円でも安く買おうとあちこちのスーパーと比較するのは、一見バカげた行為にも見えますが、それが人間の性なのです。

給料も同じ

では給料で考えてみましょう。給料が1万円昇給するのは、一般的にはかなり良い条件のように感じますが、もしその人の年収が1000万円だったとしたら、1万円にそれほどのインパクトはないかもしれません。あるいは、もし昨年に2万円昇給していたとしたら、1万円は逆に少なく感じてしまうかもしれません。すべては相対的な比較なのです。

そう考えると、スーパーの割引であれ、昇給であれ、額ではなく、率(%)で考えることには意味があります。そのほうがより実感を味わうことができます。とはいえ、率で増やし続けるということは、複利で増えることを意味しますので注意が必要です。

複利のインパクト

もし年収450万円の従業員が毎年3%ずつ昇給したとしたら、30年後にはいくらになっていると思いますか?
つまり450万×(1+0.03)の30乗です。答えはずばり、1,092万円です。ちなみに30年目の昇給額は年31.8万円にもなります。なかなかこれだけの昇給を毎年行える企業は、そうはないと思います。そこが昇給し続けることの難しさなのです。


人は変化を知覚する生き物です。だから同じ1万円という昇給額でも、感じ方は今もらっている給料によって、感じ方は人それぞれなのです。賃金制度を設計するときにはぜひ知っておきたい知識です。


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