バカボンのパパ「なのだ~」
小学校担任は、今、「よいこのあゆみ」の準備真っ最中だ。うちの学校では、道徳所見、総合的な学習の所見、ただの所見と、3種類の文章記述を1人の子に書く。
小学生の子どもがいない人にとっては、道徳の所見って何?と思うだろう。道徳は、2年前に教科になった。逆にそれまでは教科じゃなかった。私が小学生の時は、道徳をした記憶もあまりない。覚えているのは、「さわやか3組」という教育テレビの道徳番組を見たことくらいか。「♪サンサンサンさわやか三組~」という曲が強烈に印象に残っているが、さわやか三組で何があったかは覚えていない。
教科になったということは、「評価」をしないといけなくなる。評価といえば「大変よくできる」「できる」「もう少し」だと思っている人も多い。でも、「こんな様子でしたよ」とか「こんな力が付きましたよ」とかも評価らしい。
この文章での評価が、なかなか厄介で。できるのに時間が異様にかかる。
今年の道徳所見で言えば・・・・・・
①作成 10時間程
自分のクラス33人の作成。1人ずつ道徳ファイルに毎時間のワークシートが閉じてあるので、それを見ながら、その子の一番よく書けているワークシートを探す。どんなことを書いているのか、そして、その授業で勉強する内容を教科書や学習指導要領を見みて、書く。一気には書けないので、3日に分けて書いた。
②見直し30分
「用字用語辞典」や、学校から出される「学校で統一する表記」を見て、漢字間違えがないか、分かりにくい文はないか、「,」が「、」になっていないかなど、自分で見直す。
③学年点検2時間
同じ学年の先生で交換して、見直す。自分では分かると思っていても、他の人が読んだら分からないことも多い。
④教務点検2時間
教務部というのは、先生達の仕事分担。担任の他、何かしらの部に入って、学校の仕事を分担している。教務部というのは、成績や時間割など、学校のシステムの根幹の仕事をする部。
学年で点検して直した文章を、教務部の別の学年の先生が、もう一度点検する。
⑤教務主任点検?時間
教務部の主任(トップ)が、全部の学年を点検する。ここからは、私の手を離れるので時間は分からない。
⑥管理職点検?時間
学校によっては、主幹教諭→教頭→校長と3人が、それぞれ700人近く点検する。
こうしてみると、なんと点検の多いことか。
こんなに、手間を掛け、時間を掛け、うーんうーんとうなりながら書いた所見。でも、親の目から見ると、道徳の所見なんて、ぱっと見て
「ふーん」
で終わる。私も、子どものは「ふーん」だもん。その労力と成果が比例しない報われなさ。道徳の所見なんて、いらない。
教務部の私は、昨日、道徳所見の点検をしていた。1年生の所見が担当になった。100人近くの所見を見て、頭がボーっとなっていたとき、1年1組の文章を見て、「なんだこりゃ!」と爆笑してしまった。
「『人に親切することはよいことなのだ。』と気付き」
よいこと「なのだ」!!!
「なのだ」!!!!
バカボンのパパか!
一人で爆笑したら変に思われたらいけないという自制心と、100人点検した疲れと、面白いもん見付けたという妙に高くなったテンションとで、隣の先生に「ねーねー、見てみて」と証拠品を見せて爆笑してしまった。
「6年生ならまだしも、1年生の文章だよ。なんで、こんなバカボンのパパみたいに『なのだ~』って書いてるんだろう。」そういうと、意外な返しだった。
「これ、置換したんじゃないですか?」 彼の話はこうだ。
同じ学年の先生から、「子どもの考えにはカッコを付けた方がいいんじゃない。」とかダメ出しされたんですよ。で、直しがたくさんあったから「めんどうくさー」って思った。「一気に替えたれー」って思った1年1組担任は、エクセルの置換機能で
”と気付き” の場合は ”なのだ。」と気付き”に
一括置換したんですよ。
やっぱりね。どうでもよい直しが多いから、めぐりめぐって「なのだ」みたいな、違和感がある文章が、生まれちゃうんだよ。
しかし、である。バカボンのパパの
「なのだ」
は、報われない仕事をする虚しさの中で、一服の清涼剤となったことは、間違えない。