ドラマ「アフリカの夜」。大石静さんが脚本を書かれ、23年前に放映されたドラマだ。
このドラマは、23年間私を支え、励まし、ずっと心に残っている。仕事を辞めてできた時間を、このドラマの何が私を惹きつけるのか考えようと思い、NOTEに書き記している。
このドラマを語る上で、絶対にはずせないのが、第9話冒頭のみづほと八重子の対峙シーンだ。小説家の柚木麻子さんは、このシーンを観るためにFODに加入してると座談会で言っておられたようだ。その価値があるシーン。
八重子の部屋でみづほと二人。
八重子は、みづほが、殺人犯亀田伸枝と気付いてしまっている。みづほも、八重子の様子から気付かれたと…そんな微妙な関係。
みづほが突然部屋に来たものだから、隠しそびれた記事が一枚、テーブルの下にある。この状況がドキドキする。
礼太郎監督作品の映画「アフリカの夜」。実は、みづほもこの映画を観ていた。ずっと心に引っかかっていた映画と再会する。
八重子は「亀田伸枝だったんですね?」の代わりに「あなたがこの映画で見た夜を忘れられなかったのは、自分の心の夜のせいだったんですね?」と言う。この台詞がとてもいい。
そして、小道具としてアイロン登場。亀田伸枝はアイロンで夫を撲殺したのだ。それを、八重子も知っているから、アイロンを見ているみづほは恐怖なのだ。
ここから、玄関へ逃げる八重子。しかし、みづほに追い込まれて、壁にへたってしまう。
ジャイアンがのび太に、心の友だろ?漫画よこせ!っていうのと同じ。怖い。
夫が酒乱だったこと、だれも助けてくれなかったこと、時効を迎えたら唯一の理解者のお母ちゃんに会いに行きたいこと、15年の逃亡の辛さ…そんなことを吐露するみづほ。話を聞いている八重子の、恐れているような、みづほを改心させようとするような、それでも理解しようとしているような表情がとてもいい。
そして、みづほの豹変……
パワフルで、周りの人に生きる希望を与えてきたみづほ。それでも、やっぱりみづほは亀田伸枝だったんだ、人を殺した人なんだと分かる瞬間。
2人だけで12分を魅了する、室井滋さんと鈴木京香さんの圧巻の演技。みづほの首を絞めようとする瞬間の顔は、まさに般若だ。