8月32日から
大人にも、夏休みがあるんだよ。
人生の長期休暇。
ひと昔前。家庭にも職場にも落ち着ける居場所が無かった時に、私は鬱状態になった。
当時の記憶が断片的にしか無いけれど、市内では選択肢がほぼそこしか無い心療内科に通っていた。
初診で医師の顔を見た瞬間に涙がほろほろと流れて、いつも勝手にこうなるんです、と伝えたところから治療が始まった。
色々な抗うつ薬を試したし、副作用も知った。効いているのか判断しかねる部分は心の占める部分が大きい病だから仕方なかったと思うけれど、なんとか仕事に行き、職場では笑顔を通し、家庭では沈みながら定期的に通院した。病院嫌いだった私にも、自分のこの段階はまずいのでは、という自覚があった。鬱病ではなく、鬱の一歩手前の状態だったのかもしれない。
『死にたい、と思うことがありますか?』
と聞かれた時、
『消えて無くなりたいです』
と答えた。
死にたい、とはっきり言ってしまったら、死にたいを認めてしまうんじゃないか、だったのか、もしかしたらこの苦しさから逃れたいだけで本当は生きたいという意味だったのか、言った時よりも今は後者の考えが強いけれど、もしあの時自分の気持ちをもっと認めてもっとストレートに口に出せていたら、違う治療があったかもしれないし、違う進み方があったのかもしれない、という気持ちも拭えない。
通院は長引いた。
鬱状態から抜け出せない自分を責めたし、当時の家族からも責められたし、職場でも少しバランスが悪くなり、もうどうしようもなく限界の時に友人から言葉を貰った。
人生にも夏休みがあっていい。
あなたは今、その時期。
責めて責められて追い詰めて追い詰められて、そんな時この言葉は、初めてダメな自分を許して貰ったようで、今の自分の状況から抜け出す勇気を持とうと自分の心の向きを変えた。
夏休みの終わりは自分で判断しよう。
そう決めて動いた。当時の環境から逃れたくて生きる場所を大幅に動かす決断もした。
大人だったから出来た判断や行動はある。
もし学生さんだったらそんなことは難しいかもしれない。
けれど、自分は無力だと思いながらも、この時期に見かける2学期に学校に行きたくない気持ちを受け止めるたびにいつも伝えたくなる。
もし心が痛くて学校に行けないなら、夏休み延長してもいいんだよ。8月を31日で終わらせなくていいよ、避難する場所もあるよ、すぐそばに助けてくれる人がいなくても、頼れる大人はいるよ。つらいんだ、って言っていいんだよ、うまく伝えられなくてもいい、死にたいくらいつらいんだ、って言っていいんだよ、夏休みは待っててくれるよ、学校の夏休みは終わっても、人生の夏休みはみんなにあるんだよ、あなたが必要な分、休もうよ。って。