SING YOUR WORLD = MAKE US HAPPY ~ UT×YOASOBI
2021.7.4 YOASOBI ”SING YOUR WORLD”
セットリスト
1. 三原色
2. ハルジオン
3. もう少しだけ
4. たぶん
5. 怪物
6. Epilogue 〜 アンコール
7. 夜に駆ける
8. ハルカ
9. 群青
世界よ、見たか。これがYOASOBIだ!!!
そう思うライブだった。
わたしが見た、感じた、YOASOBIをレポート。
特に印象的だった曲を振り返っていく。
「たぶん」
歩きながら歌うikuraちゃんは、きっと『たぶん』の主人公なのだ。
Tシャツというものは、日常の権化だと思う。
代わり映えのしない日常の中に溶け込んでいて、それでいて、わたしたちの気分を変えてくれる。UTとYOASOBIがコラボするって知ったときだって、みんな浮き足立ってTシャツのデザインを見たりどれを買おうかと悩んだりしただろう。
「たぶん」は、大衆的恋愛が終わり、日常が日常でなくなったときの曲だからこそ、このTシャツという存在に目を惹かれたんだろう。
ラスサビに向かって、ikuraちゃんはAyaseさんのもとへ歩いて行く。
気づけば辺りからTシャツはなくなり、さっきまでとは違うインテリアが、空間が、彼女を迎え入れる。
これはきっと「模様替え」だった。
一人で歩いていた空間を忘れるための、模様替え。
次へ向かうための、模様替え。
原作小説『たぶん』では、元恋人の痕跡を消すためだった。
”SING YOUR WORLD”では、ライブを次へ進めるために、この模様替えを行なった。
「小説を音楽にする(NOVEL INTO MUSIC)」がコンセプトのYOASOBIだからこそできる、ステージの構成の考察。
小説と音楽を楽しんだ上に衣服やライブステージでも考え、楽しませてくれる。
YOASOBI、YOASOBIチーム、さては天才では?
模様替え、完了。
ikuraちゃんがその椅子に座って初めて、ステージの模様替えが終わった。
彼女が、ライブの流れを変えるために、「空間の痕跡にとどめをさす」役目を持っていた。
夜の東京を見下ろす、優しい空間に、YOASOBIの音楽が響き渡った。
「ハルカ」
ハルカの原作である『月王子』は、遥という女の子と、月の王子さまが描かれたマグカップのお話。
自分を迎え入れてくれた遥を見守り、応援し続けたマグカップの目線から物語も曲も展開する。
”SING YOUR WORLD”では、そんなハルカを少し違う解釈で聴くことができた。
ステージの真ん中で向かい合っているAyaseさんとikuraちゃんは、遥と月の王子さまのように思えた。
どちらかが欠けてしまっては、YOASOBIは存在しない。
バンドメンバーやYOASOBIチームはもちろんのこと、Ayaseさんとikuraちゃんが揃って、はじめてYOASOBIが完成しているんだということが画面越しにひしひしと伝わってくる、そんな曲と演出だった。
何気なく出会った2人のようで、実際には出会うべくして出会った2人がユニットを組んだのだろう。
YOASOBIが生まれた日も、こんな雰囲気だったのかな。
Ayaseさんがikuraちゃんを見つけたときは、もしかしたら遥と月の王子さまの出会いに重なるところがあるのかな。
出会いと軌跡を描いた曲で、画面の中から楽しそうに音を届けてくれる2人のはじまりを想像せずにはいられなかった。
ikuraちゃんがAyaseさんを見つめる目がとても優しい。
この日の「ハルカ」は、遥と月の王子さまのための歌ではなく、Ayaseとikuraのための歌だった。
……余談だが、わたしは元吹奏楽部だったので大阪桐蔭高校吹奏楽部との演奏で(月並みな表現ではあるが)とてもテンションが上がった。
優しいけれど力のある音が加わることで、バンドのみとは違うYOASOBIを見ることができたと思っている。
「群青」
「ハルカ」に続き、大阪桐蔭高校吹奏楽部の演奏とともに迎えた最後の曲。
高校生と一緒に演奏することで、この曲はMVの動画の何倍、何十倍ものエネルギーを持ってわたしのもとへ届いた。
葛藤を抱え、自分と戦い、誰かと戦いながら生きる存在が、まだ何者でもないかもしれない172人の音が、画面越しだけれど、突き刺さる。
まっすぐな音に、いつかの自分自身を思い出した。
彼ら彼女らの音に乗ったikuraちゃんの声も、心なしかいつもより強い気がした。
木管楽器のリードミスのような音が聴こえたのはこの曲だったかな。
その音さえも、愛おしかった。
その音さえも、あの空間にいたメンバーの「僕にしかできないこと」だから。
配信で音楽を届けてくれたYOASOBI、バンドメンバー、大阪桐蔭高校吹奏楽部、そして配信を見ていた一人一人の「自分にしか出せない色」が、この時間に集まっていた、と思う。
感動という言葉だけでは伝えきれない、けれどもたしかに感情を大きく揺さぶるパフォーマンスに、目を、耳を、そして心を奪われた。
わたしは「群青」に思い入れがある。
わたし自身、「群青」に何度も励まされ、緊張する場面を乗り越えてきた。
わたしに何ができるのだろうか?わたしのことを必要としてくれる場所に、どのように向き合えばいいのか?そもそも、そんな場所はどれくらいある?はたまた、存在しているのか?
そんな考えを持ったことも一度や二度ではなかった。
書き手としての自分がこれでいいのか、今でもわからない。
書くことが好きだからって、それに100%の自信を持っているわけじゃない。
でも今わたしは、パソコンに向かって、YOASOBIのライブレポートを書いている。
自分がやりたいと思ったことをただやっていきたい。
その想いが今、わたしを動かしている。
これは自分自身にしか書けないものだ。
誰が何と言おうと、これがわたしの武器なのだ。
わたしにとって「群青」は、自分の武器を再確認させてくれた曲。
自分は自分のままでいいんだ、と思わせてくれた存在の一つが、「群青」を生み出した、YOASOBIだった。
SING YOUR WORLD = MAKE US HAPPY
わたしはこのライブを、乗っていた車の助手席から観ていた。
車の助手席という小さな空間に、YOASOBIの音楽が、パフォーマンスが、どこまでも広がっていた。
ライブが終わったことを示す画面を見て一番にこぼれたのは、言葉ではなく呼吸。ふう、と息をつくことしかできなかった。
その瞬間がわたしはとても好きだと思った。
息をついた自分の中に満ちている感情を一言で表すなら――「幸せ」だ。
全国、いや全世界か?
わたしと同じようにどこかでライブを見ていた人みんな、同じ気持ちだったんじゃないだろうか。
”SING YOUR WORLD”がもたらしてくれたのは幸せだった。
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