無職なので大腸内視鏡検査の予約をする
せっかく働いていないので、24年ぶりの大腸カメラをついに決意する。
おなかの弱さには自信がある。子どもの頃からいっつもおなか痛いおなか痛い言うてるから親もしだいに「あ、そう」と相手しなくなった。病院行ってもビオフェルミン出されるだけ。昼ぐらいから腹が張り出し、夕方には肩まで痛くなって息ができなくなるのはみんな同じと思っていた。私の便にまつわるエトセトラを話そうものなら、noteの投稿だけで「はじめの一歩」を超えるボリュームになるわ。
24年前、どうにも胃が痛くて、当時出産直後で仕事してなかったので、人生初の胃カメラを飲んだ。そしたら十二指腸潰瘍だった。ついでに大腸も診てみよう、と別日に大腸カメラをやることになった。胃カメラとの壮絶な死闘を終えたばかりの身体で大腸カメラを迎え入れることができるだろうか、と怖気づいたが、母が同じ病院で大腸カメラをやって「夢見心地やったわ…あんな気持ちいいものがこの世にあるなんて…」とうっとりしていたので、「胃は口から洗濯機の排水ホースねじ込まれるようなもんやからそらつらいはず。しかし下から入れるもんがまず痛いわけがない。日々超頑固な便秘に苦しむ我なれば、カメラなど恐れるに足らず!」と臨んだ。
甘かった・・・。事前に飲む大量の下剤でまず挫けた。泣きながらこたつの上に2リットルペットボトル2本の下剤を並べ、子どもの世話しながらちびちびやった。朝方までほとんど寝られず、飲み干した頃からじわじわ排出作業が始まる。予約の時間が迫る。中途半端に下剤で刺激されても、日ごろの超便秘のおかげで排出がいっこうに進まない。まずいな、このままだと駅に着いてから本格的に催すぞ。実家に子を預けて病院まで1時間弱。電車の中で大波小波に襲われながら、半泣きで病院にすべり込む。さらにそこから下剤の追加。待合室を飛び出てトイレへ駆け込むこと幾度か。5時間ぐらいしてやっとお許しがでて着替えてカメラ挿入となる。長い下剤との闘いがやっと終わる、と安堵もつかの間、「いいいい痛い!痛い!痛いですーーー!!」胃カメラとは違う激痛にもんどりうつ。話が違う!うちのおかんのみならず、さっき受付でおじさんが「いやー、大腸カメラほんまに気持ちようおましたわ」って言うてたの聞いたで!どこがやねん!
やっぱりあんまりきれいに出し切ってなかったので、腸内を洗浄液でぶしゃあっとやって、汚水を吸い取りながら進んでいく。ベッド下のでっかいタンクみたいなビーカーに洗浄後の濁った液がどんどんたまっていく。空気を入れて腸を膨らませ、ふっとい管の先端がうねうね腸壁にがっつんんがっつんぶつかる。それがめっちゃ痛い。長くても30分くらいで終わると聞いていたのに管が全然進んでくれない。「まだですかね・・・」とつい聞いてしまうが、お医者さんも必死そうで、早くしてくれとは言えなかった。胃カメラものつらさとは別口のつらさ、お産と比べもんにならんが、いやさでいえばお産クラスのいやレベル。ずーーーっと続く痛みに意識が飛び、知らんうちに嗚咽していた。
体感5億年ぐらいのたぶん1時間半ぐらいが終わり、ぐったり疲れたお医者さんが「お疲れさまでした。抜きますね。」とやっと言ってくれた。アシストの看護師さんも尋常でないくらいやつれていた。画像を見ながら説明を受け、着替えて受付へ行くと、お医者さんが「いやー。予定外に長くなってすみません。腸が普通の人の倍ぐらいあって、しかも折りたたまれ方がちょっと人と違うので迷路みたいで。」とおっしゃった。そんなこと、あるん。変人の自覚はあったけど、腸まで規格外とは。どんなふうに腹の中に腸がおさまってたんか絵に描いて見せてほしいな、と思ったけど疲れ切ってたので「そうですか、それはお手数かけてすみません」と謝って支払いをすませた。
ここ15年ぐらい、胃カメラはちゃんと定期的に受けている。苦しくない胃カメラと検索すれば山のように出てくるすばらしき時代。鎮静をかけてもらい、大いびきかいてるうちにすんでしまうので、これはほんとによい。しかし、大腸は死んでもやらない、と決めていた。事前に飲む大量の下剤がまずだめ。病院ついてからも何回もトイレ行くのもいや。おしりペロッと出すのもいや。ただでさえおなか弱いのに、これでもかと腸を痛めつけ身も心もズタボロになったあげくのあの苦痛はもう絶対ムリ。胃腸の不調があっても「やっぱりカメラやりましょう」って言われたらいやだからそもそも病院にも行かない。たぶん、自分は過敏性腸症候群だろうな、と思っていたけど大腸カメラさせられるぐらいなら自力で耐えるわ!と思っていた。
しかし、最近は大腸も鎮静下でできるのだ。心が揺れる。下剤さえ乗り切ったら後は寝てるうちにやってもらえる。ただ、運転して帰れないので、前後2日は仕事も用事も入れず、公共交通を使って病院へ行かなくてはならない。それが今まで無理だった。今住んでいるところはまじのまじで僻地なので、ちょっと大きな町に電車で行こうとするとゆうに5時間ぐらいかかる。結局2日、胃カメラも入れれば3日がかりになり、たった数日でも自分のために時間を作ることが今までままならなかったのだ。
無職、世話のいる子どももいない。今しかない。次の仕事を探すにも、ほぼ毎日ぴーぴー腹下してる状態では、勤まる仕事がない。逆を言えば、家にいられるからこそ、いつでも安心して催すことができるわけで。いっそ在宅でできる仕事に本腰入れるべきかとも思う。まあ、その前に、ちゃんと診断を受けて治せるもんは治しとくべきだな。