ありがとうおっさんずラブ
▼おっさんずラブが最終回を迎えた。
Twitterで「地上波でBLがやる」と流れてきたのが2ヶ月前。まさか毎週毎週こんなに楽しみになるなんて思いもよらず、冷やかし半分で見始めたドラマだった。最終回を見終えた今、一番に感じるのは、このドラマに出会えて、リアルタイムで観ることができてよかったという喜びである。泣きすぎて目と鼻がぐずぐず。
それにしても、全七話は短すぎる。どうしてワンクールもないんだろう。あと一年やって。
部長の春田への恋をもっとシリアスに掘り下げて欲しかったし、これから五回の恋を応援したかった。もっと蝶子と麻呂の甘酸っぱさを味わいたかった。ちずが新しい恋を見つけた経緯を事細かに知りたかったし、武川さんの初恋スピンオフまだ?と思った。
なにより、春田と牧のイチャつきを永遠に見ていたかった……上海から毎日電話してくる春田に「通話代考えろ」ってキレて、でも笑みを抑えきれない牧が見たかった、春田のお母さんや牧のお父さんとの紆余曲折のエピソードや、ふたりの結婚式も見たかった。
シーズン2を希望するお便りは、早急に送らなければいけない。
さて、自分がおっさんずラブの何にこんなに惹かれたのか、今の気持ちを書き留めておきたくて筆をとった。
«腐女子»、«セクシャルマイノリティ»、«役者経験»、«シナリオ書き見習い»、と自分の持つ四つの顔に絡めて感想を書いていくことにする。
前提として自分用の忘備録だが、誰かの目に留まって、作品語りのきっかけになれたら嬉しい。
▼腐女子から見たおっさんずラブ
最高だった、の一言に尽きる。地上波でこんなに質のいいBLが見られるなんて、この時代に生まれてきてよかった!!!
天真爛漫なノンケの主人公、実は乙女な渋い歳上上司、完璧なスパダリなのに闇が深いゲイ、彼に未練のある顔のいい元カレ、彼らを取り巻く個性豊かなメンバー──どう考えても商業BLの実写化なのにまさかのオリジナル。天才か。
わたしは雑食腐女子なので(男女のカプも好きだ)、延々と「春田分身しろ」と思っていた。
ストーカーになりかねないほど乙女全開な部長が可愛すぎて、春ぶちょも最後までありよりのありだった。牧春でも春牧でもいいから幸せになってほしかった。元恋人の武牧の解りあってる感に「んん゛ん゛ん゛」と頭を抱えたし、春田とちずという幼なじみポジションなんて萌の塊だった。いくらでもパラレルワールドが見たい。今からでも春田は分身の術を身につけてほしい。
それでもやっぱり、春田と牧が(そして田中圭と林遣都が)落としていく爆弾に何度も殺されて、くっつくならこの二人しかありえないと納得だし末永く爆発してほしい。
あの終わり方はなんだ!牧春腐女子にも春牧腐女子にも優しい公式!神かよ!
二人が惹かれあって、想うがためにすれ違って、最後はお互い自分の気持ちを認める、10000回見た王道ラブストーリーだけど、あと1000000回見たい。
縮まっていく距離感にドキドキできて、幸せそうなじゃれ合いに悶えられて、春田からの告白に号泣できて幸せだった。
「んなわけねーだろっつの」───ああああああ?!?!?続きは脳内で補完できるのでご心配なく!!!!!
▼セクシャルマイノリティへの関心とおっさんずラブ
まず初めに、わたしは男も女も好きになるが、自分をセクマイにカテゴライズする必要性を感じてこなかったのでLGBTsの内情などに詳しくない。そのことを念頭に置いた上で、ぬるく読んでほしい。
もうセクシャルマイノリティは、世間から閉ざされた存在ではないと思う。偏見の有無はさておき、知識としては知らない人の方が少ないだろう。それでも特殊な世界だというイメージはずっとつきまとっていて、笑いの種にされることも未だに多い。男女で恋愛し、結婚するのが〈当然〉だという価値観は根強いし、恋人がいると聞いた時にわざわざ性別を確認することは大抵の場合しない。
全ては〈知らない〉からだ。興味を持って情報収集しない限り、世間の大多数は知らない。クラスに二人くらいはセクマイの人間がいるなんて学校では教わらないし、何を思い、何に悩み、どういう恋愛をしているかを知る機会は圧倒的に少ない。
実際におっさんずラブを、どんな性別や年齢層、LGBTsについてどの知識レベルの人達が見たかは知らないが、このドラマがきちんと〈大衆〉に向き合っていたことに好感を持った。
腐女子や当事者だけをターゲットにするのは簡単だっただろうけど、コメディを織り交ぜて誰もが観られるドラマに仕上がっていたのがすごい。
「オカマの恋愛を面白おかしく書いたドラマ」だと思って見始めたとしても、「恋の楽しさや辛さは何も変わらない」と共感し、「同性というのは壁のひとつでしかない」「登場人物を応援したい」とスムーズに気持ちが切り替わっていく作りになっていたと思う。ちずや舞香さんが一切の動揺なく受け入れていた描写も大きい。
ホモフォビア(=同性愛に嫌悪感をもつ人)でも、牧が身を引いた苦しい別れのシーンや、最後の春田の告白には必ずぐっと来るはずだ。
実際に、おっさんずラブからセクシャルマイノリティに興味関心を持ったという話題もあったし、牧や部長の幸せを願った人なら、現実世界でセクマイの人間に出会ったとしても偏見なく応援できるんじゃないだろうか。
そういう意味で、おっさんずラブはすごいドラマだった。もっと大きく話題になるためにも、やはりシーズン2は必要ですね!!!
長くなったので、そして眠くなったので、続きは次の記事に回します。
→
▼役者の端くれから見たおっさんずラブ
▼シナリオ書き(見習い)としておっさんずラブに思うこと