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OiBokkeShi「老いと演劇のワークショップ」に参加して学んだこと

僕「いつも元気いいねー、幾つになったん?」
ご門徒「今年の秋で80歳よ」
僕「えっ、80、そりゃ分からん。若いねー。」
ご門徒「よう言うわw。まぁ、頑張っちょるわな。健康に気をつけて毎日運動して、しっかり食事を取るようにしちょる。認知症になったら終わりやけんね」

お参りにいって近況報告や世間話をしていると、ときどき聞こえてくる声。「認知症なったら終わり」。

認知症への不安や恐怖、その気持ちも分かるけど、なんか寂しいなといつも感じる。たぶんそれは、僕のなかで、認知症になった方々の人生が否定されているように感じるから。これまで僕を育ててくれた認知症になった方々の悪口を言われている気になってしまう。もちろん、そんな悪気がないことはよく分かっているけど、「認知症なったら終わり」を聞くたびに、いつもモヤモヤする。

今年の秋で80歳になるおばちゃん、どんなに健康に気を使っても、益々長生きしたら、認知症なってまう可能性高いよ。そしたら、これまでの豊かな人生を否定してしまいかねないよ。そんなん寂しいやん。

そんなことを感じていたときに、平田オリザさんのお話を聞く機会があり、そこでチョロっと紹介されていたのが、「老いと演劇」OiBokkeShiを主宰する菅原直樹さんのこと。認知症ケアに演劇的手法を取り入れたワークショップを実施されているそう。WEBやSNSをチェックし、いつかお会いしたいと、もう1年ぐらい思っていたけど、ようやくその念願叶う。僕も講師で参加しているワークショップフェスティバル ドアーズで老いと演劇のワークショップが開催されたので参加してきた。

実際に介護現場で実践されている内容や、演劇のワークショップが中心。間間に、認知症の方が見ている世界観やケアの方法など座学が入る。ワークショップと座学のバランスが絶妙で、気づき多く学び多い、充実した時間だった。ダイジェストで振りかえる。

先ずはアイスブレイクで、介護現場で実践されている演劇的手法「遊びリテーション」を体験。演劇のなかでよく行われるアイスブレイクやワークショップをアレンジした内容だそう。リハビリテーションだけど、あくまでも遊び。遊びは「できる」ことばかりじゃつまらない。「できない」からこそ面白い。「できる」人が評価され、認められる偏った社会への疑問。高齢者や認知症は「できない」ことが増える。遊びのなかでは「できない」ことや「できない」人が居てこそ、助けあいやユニークさが生まれる。遊びは「できる」「できない」の価値観を超えるんだな。

次は、即興演劇を取りいれて、施設に入所している認知症のお年寄りと、介護スタッフになり、認知症の方のストーリーを受容するワーク。介護スタッフの人が「ご飯の時間やけん、ご飯いこう」と声をかえるが、認知症の方は見当外れの要望をしてくる。「セーラームーンになりたい」とか「いまから宇宙旅行いくねん」とか。その見当外れの要望を、何でも受け入れる、という内容。「Yes, And」という即興演劇の手法らしい。6人ぐらいのグループになり、テンポよく立場を変えて回していく。

そうしたら、次に、参加者の一人が認知症のお年寄り役になり、菅原さんが介護スタッフ役。今度は、認知症役の見当外れの応答に、介護スタッフ役はずっと間違いをただし、正論を言い、どうにかしてご飯に連れて行こうとする内容。

スタッフ「そろそろご飯の時間です、一緒に食堂いきましょう」
お年寄り「ラクダにのって、王子さまに会いにいく」
スタッフ「いやいや、ここは老人ホーム。ラクダ居ないし。王子さまとか知らんやろう」
お年寄り「王子さま、私のこと好きやってん。だけど、策略結婚で、好きでもない人と結婚した。私のこと待ってんねん」
スタッフ「いやいや、王子さまとか知らんやろう。ってか、どこの国の王子さまなんよ。もう分かったからご飯いくよ」

みたいなやり取りを繰り返す。最後は介護スタッフは埒が明かないと、先輩スタッフに助けを求めるというところで終了。その後、認知症役の人に、感じていた気持ちや、何をして欲しかったのかなど、インタビュー。

最後に、菅原さんが、実体験を語ってくれながら、認知症の方が見ている世界観やケアの方法などレクチャー。

ご高齢の方って、たぶん、今日が一番いい状態。明日は今日より少し衰えてしまうんだと思う。だから、いまこの瞬間を一緒に楽しまなくていつ楽しむのか。そんな気持ちで接することが大切なんだと思ってます。

どんな綺麗ごとを並べても、介護はやっぱり大変な仕事。それは施設職員であろうが、家族での介護であろうが。だけど、老いていくこと、ボケていくこと、死んでいくことの認識や価値観が変わると、だいぶ気持ちは楽になるし、楽しくなるそう。そういった認識が広まり、そういった風に認知症を受容してくれる人やコミュニティがあると思えると、認知症になることの不安や恐怖も少しは変化するんじゃないかな。

つけ加えると、対人支援系の講座よりも、当事者性を高める演劇の方法に、僕は魅力を感じる。誰もが老いていく人生である限り、介護される側/する側の関係性ではなく、「ともに老いていく存在」と横並びな関係性でありたい。それは理想の美辞麗句なだけであって、現実はそんなに優しくないことも重々承知だけど、これから地域コミュニティでのケアを促進するならば、そういったマインドを耕していかなければならないのではないか。

お参りしていると、こんな声にも出会う。

「あそこのおばあちゃん認知症が進んでるみたい。私たちに何ができるかなって主人と話すんよ。いずれ私たちも通る道。先にその道を歩む先輩から学ばせてもらうこともあるだろうって思うんよね」

そんなコミュニティや関係性を紡いでいきたい。

OiBokkeShi、菅原さんのワークショップ、僕だけが体験するのはもったいない。ご門徒のおっちゃんやおばちゃん、地域の皆んなに体験してほしい。どうしたら実現できるかなと妄想してる。

いまここをともにいきる

あたたかなメッセージをくれる、あっという間の90分間だった。


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