ありふれた今に恋したら、すこしだけ彩度上がった未来
「夜のクラゲは泳げない」というアニメが面白い。
なんの予備知識もなしで、タイトルとキービジュアルだけの直感で、たまにこのような大当たりを引くことがあるからアニメはやめられない。
「夜のクラゲは泳げない」は、過去に心の闇を抱えた4人が、それぞれ作詞&ボーカル、イラスト、作曲、動画編集を担うことで、それぞれが本当にやりたいことや本当の自分を見つけていくアニメです。
なんというか、これ10年前くらいのニコニコ動画なんですよね。
ニコニコ動画が一番熱かった時期。
初音ミクを使って誰もが作曲ができ、ボカロPになれた。
自分の曲でMVを作りたいから、Twitterで絵師さんを見つけて、自分のMVを作ってもらう。
またそのMVを見た歌い手や有名なニコ生主が、自分もこの歌を歌いたいとカバーする、いわゆる歌ってみたですね。
結果、曲の再生数が上がり、そのボカロPがどんどん有名になっていくという。
このクリエイターの好循環スパイラルこそがニコニコ動画の黄金期であり、「夜のクラゲは泳げない」はまさに、そのスパイラルの中に揉まれていた人達を映像化しているようで、ワクワクしてしまいます。
ニコニコ動画を昔から見てきた人で、このアニメが心にささらないという人はいないんじゃないかと思います。
もちろんアニメの中ではあくまで現在の令和のSNSを然としたYoutubeやインフルエンサーを通じての表現になってはいますが、構造は同じです。
このアニメは毎回EDが変わり、MV付きという、アニメのストーリーに合わせたような作りになっています。
その中の一つに「1日は25時間。」という曲があります。
やりたいことが多くて1日25時間じゃ足りない。もう少し夜が長かったら、君ともう少し同じ時間でいられたらと願うような曲です。
その曲の中でとても好きなフレーズがあります。
「ありふれた今に恋したら、すこしだけ彩度上がった未来」
悩みもがき苦しみながらも今の自分を肯定することで、本当の自分の姿が具体的に見えてくるという意味だと思うんですが、ここまで短い一文でそれをよく表現したなと感動しました。また「彩度」が「再度」とダブルミーニングのようになっており、もう一度本当の自分でチャレンジしたいという前向きな気持ちにも取れて、とてもエモいフレーズになってます。
これは日本語にしかできないな。日本語って美しいなと、そんな風にも思いました。
作詞作曲は40mPさん。
まさにニコニコ動画全盛期で活躍されてきた人で、私はもう一度ここで感動することになりました。