こんなところにも!? 生活に潜む「マイクロプラスチック」の正体とは
近年、マイクロプラスチック問題が深刻化しています。しかし、実際のところ「マイクロプラスチックってなんなの?」「定義がよくわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マイクロプラスチックと聞くと、小さなプラスチック片をイメージされる方もいるかもしれませんが、実際のマイクロプラスチックは目に見えないほど微細なものです。それゆえに、私たちは無自覚のうちに、日常生活の中で大量のマイクロプラスチックを流出させてしまっています。
今回は、そんなマイクロプラスチック問題について3回の記事に分けて取り上げたいと思います。第1回目の今回は、そもそもマイクロプラスチックとはなんなのか、具体的な流出の原因などについてご紹介したいと思います。
マイクロプラスチックとは?
マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチックを指します。かろうじて目に見えるか見えないかくらいの、非常に小さな粒子だということがわかります。たとえば、砂浜でごみ拾いをしたとしてもマイクロプラスチックそのものを拾い集めることはできません。
このマイクロプラスチックには、一次マイクロプラスチック・二次マイクロプラスチックの2種類が存在します。それぞれ、くわしく解説していきます。
一次マイクロプラスチック
一次マイクロプラスチックとは、化粧品などのスクラブ剤や乳化剤としてマイクロサイズで製造されたプラスチックのことです。数ミクロン~数百ミクロン(0.001mm~0.1mm)ほどの非常に小さな粒子は、マイクロビーズとも呼ばれます。
このマイクロビーズは、スクラブ剤として洗顔料やボディウォッシュ、歯磨き粉に含まれていたり、化粧品の質感を出すための乳化剤としてヘアケア用品に含まれていたりします。あるいはマスカラやファンデーションなどのメイク用品に含まれることもあります。
また、プラスチック製の合成繊維で作られた衣類やスポンジの破片が流れ出たものも、この一次マイクロプラスチックに当たります。
二次マイクロプラスチック
二次マイクロプラスチックとは、街や海に捨てられたプラスチック製品が紫外線や衝突などの影響で劣化して分解され、5mm以下のマイクロサイズの破片となったものを指します。マイクロプラスチックというと、こちらを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
二次マイクロプラスチックの主な発生原因は、不法投棄やポイ捨てなどによって、ビニール袋やペットボトルといったプラスチックごみが海に流れ出てしまうことです。
これらはマイクロ化する前であれば回収できるため、一次マイクロプラスチックに比べると対策がしやすいともいわれています。
特に一次マイクロプラスチックの存在は、意識したことのない方が多いのではないでしょうか。スキンケア・ヘアケア用品にプラスチック片が含まれているとは驚きですよね。
また、合成繊維の衣類やスポンジからも日々マイクロプラスチックが流出しているといいます。私たちは知らず知らずのうちに、日常生活の中で大量のマイクロプラスチックを排出してしまっているのです。
マイクロプラスチックの主な発生源とは?
マイクロプラスチックの大きな問題点のひとつは、回収が非常に難しい点です。回収できない以上、これからの私たちにできることは流出を食い止めることしかありません。そのためには、具体的にマイクロプラスチックの主な発生源を知る必要があります。
生活排水からの流出
主に一次マイクロプラスチックの流出は、マイクロビーズの粒子があまりに細かいため濾過がむずかしいことが原因です。生活排水は通常、自然界へ放出される前に処理施設でフィルターを通して濾過され、不純物を除去されますが、マイクロビーズはそのフィルターをもすり抜けてしまうのです。
化粧品や歯磨き粉、スポンジの破片や衣類の繊維など、日常で流れ出る細かいマイクロプラスチックが、濾過されないままに川や海へ流れ出てしまっているのが現状です。
不適切なごみ処理
不適切なごみ処理も、マイクロプラスチック流出の大きな原因となります。二次マイクロプラスチックのもとになるプラスチックごみは、川や海でポイ捨てされたものに限りません。
生活に困窮している方が有料指定のごみ袋を購入できないために川にごみを捨ててしまったり、回収日以外に出されたごみ袋が鳥に荒らされ水路へ流れ込んでしまったり、街路のごみ箱からあふれてしまったごみが風に飛ばされて川に流れ込んだり、さまざまなケースが考えられます。
ポイ捨てしているつもりはなくとも、適切でないごみ処理が、結果として二次マイクロプラスチック発生の原因となっているかもしれないのです。
また、プラスチック製の人工芝も発生原因の一つといわれています。手入れが行き届いていないと劣化した破片が風に飛ばされ、そのまま川へ流れ込んでしまっているかもしれません。
日本国内のプラスチックごみは、半数以上が容器包装です。レジ袋やペットボトル、弁当容器、洗剤容器など、あらゆる使い捨て容器が日々大量消費され続けています。その中の一部が、さまざまな要因で川や水路に流れ込み、結果として海にたどり着いてしまうのです。
まとめ
今回はマイクロプラスチック問題の第1回ということで、マイクロプラスチックとは一体なんなのか、どこから流出しているのか、という2点を解説しました。
化粧品・歯磨き粉などに含まれるマイクロビーズの存在については、知らなかった方も多いのではないでしょうか。私たちの生活には目に見えている以上に、多くのプラスチック製品があふれているのです。
マイクロプラスチックの流出は、一人ひとりの小さな意識で減らしていくことができます。私たち個人が取り組むことのできる対策については、第3回にてご紹介する予定です。
次回の第2回では、これらのマイクロプラスチックがなぜ問題視されているのか、そして、マイクロプラスチック対策として世界ではどういった取り組みが行われているのかについてまとめていきたいと思います。
【参考】
ELEMINIST「深刻化するマイクロプラスチック問題 各国の対策と日本企業の取り組み事例24選」2023年12月24日発行
ELEMINIST「海プラスチックごみ問題とは 海洋環境や生態系への影響と解決に向けた取り組み」2024年3月4日発行
Spaceship Earth「マイクロビーズの現状は?人体への影響や世界と日本の対策を紹介」2023年9月27日発行