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Atomic DesignからCosmic Designへ視線を上げよう

製品の開発を構造的におこなうフレームワークとして「アトミックデザイン」という考え方や仕組みが注目を集めています。

原子、分子、生体、テンプレート、ページという風に、私たちが普段触れている製品やサービスを分解し要素に分けていくことで、それを開発するものです。

再利用できるデザインライブラリーを用意しておくことで、より高い次元のデザインに注力することができるという面がありますので、アトミックデザインには、①良いアトミックをデザインすることと ②アトミックを使ってよい製品をデザインする という2つのデザインが循環しながら進化していく形になります。

昨年末に日本でもデザインシステムの書籍が出版されたりし、今年に入ってからAsobeXDにコンポーネントの概念が実装されたことで、理念から実践に急激に進んでいきそうな気配を感じています。

私が自分の職場で普及するかどうかの目安にしているWさんが「シンボル」「コンポーネント」というワードを使いだしたので、今年中に実践に移せるのではないかと思っています。

そしてより重要なことは、このワードが単に今のデザイン業務を効率化するためだけでなく、もっとデザインすべき領域があるという危機感から来ていることです。

「もっとデザインすべき領域」とは何なのでしょうか?


Society5.0を実現するのは社会システム

企業の中で製品開発をしていると、何カ月も何年も製品の中を構成する要素間の整合にばかり気が行ってしまい、日程通りに製品を作ることに集中してしまいます。

これはアトミックデザインの視線です。

実際に製品ができてユーザーが購入したり利用したりするときには、社会や生活の環境で他の製品やサービスと連携して上手く動作することが求められます。

電気的、通信的に接続されていなかったとしても、製品の利用環境として他の製品との関係が必要ですし、IoTによってこれまで単独に動作していたものも、インターネットを通じて相互に接続されるようになっていきます。

ユーザー体験(UX)や社会システムをデザインする視点では、個々の製品が要素となり、より広い世界を作っていくことになります。

これがコズミックデザインの視線です。


医療や自動車のような分野だけでなく、研究分野や映像分野においても、政治や社会の影響を強く受けると同時に、それらに対して影響を与える存在でもあります。

これまでは経営レベルの課題として扱われていたことを、デザインの中に取り込み、製品コンセプトとの整合性や、モノ作りの考え方までも変える必要が出てきています。


AIと共同作業をおこなう自動運転車や医療機器、コミュニティで共創と競争をおこなうデジタルカメラや研究装置など、これまでと全く違う製品の開発と新しい使い方をデザインしていかなければなりません。

アトミックデザインでおこなっていた、既存要素の積み上げだけではデザインの視野としては不十分になっています。


コズミックデザインの必要性

スマートフォンの本質はアプリを通してさまざまなサービスを利用できることにあります。その範囲は年々広がり、サイバー空間の情報だけでなく、家の鍵やエアコンなどフィジカルな装置をコントロールできるようになっています。

同じように、自動運転車は交通情報インフラと組み合わされることで実現し、医療機器は他の医療機器や情報システムと連携することで安全で効率的な医療を提供できます。

星、太陽系、銀河系、銀河団をモデルとして、製品連携がシステムを作り、そのシステム同士がさらに連携していき、いくつものグループ階層を作りながら宇宙全体をつくっていくイメージです。

これらの大きなシステムをデザインする手法やツールを生み出すベースに、コズミックデザインの思想とフレームワークが必要だと考えています。


コズミックデザインのためのツールが欲しい

今のところAdobe XDなどのプロトタイピングツールは、アトミックデザイン領域のデザインシステムを実現するための機能を充実させていますが、これからはコズミックデザインのツールとしても発展していって欲しいと思っています。

複数機器やマルチモニタの連携モデル、人と装置との役割モデル、行動空間と情報空間の連動モデルという身近なところから、さらにシステム同士のAPIの定義と運用モデルなど、デザインと検証に使えるプロトタイピングが必要になってきますが、現在ではパワーポイントにまとめた書類をベースに実際に機器を開発し、実証実験をおこなうまで分からないという非効率な進め方しかありません。

アトミックデザインからコズミックデザインへの拡張も、難しいものではなくオブジェクトモデルが連続的につながったものと考えることができます。

後は、デザイナーが視線を上に向けて、コズミックを実感できるモデリング・プロトタイピングツールがあれば、簡単にできるのではないでしょうか。


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