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カメラサイズと撮影リズム ~サイズの心理学~
これはユーザーのメンタリティーに関する私の仮説です。
最近話題の”フルサイズ”ミラーレスにも関係する話です。
カメラの基準がフルサイズになり、それよりも小さいAPS-Cやフォーサーズは劣っているという論調を目にすることがありますが、魅力的な写真を撮るということや、写真撮影を楽しむということにおいて、何が本当なのかを考えてみます。
ここで言う「カメラサイズ」とは、それなりの性能を持ったレンズシステムを含めたトータルのサイズのことで、単にボディの大きさではありません
「大は小を兼ねる」のか?
最高夕陽をじっと待つ。1時間後にくる列車を待つ。シーンを作り込み最高の1枚に仕上げる。
こういったじっくりと腰を据えて時間を使った撮影では、やはりより大きいカメラが似合っています。
逆に、都会の人が行き交う瞬間を切り取り、もうひとつ先の角を曲がるともっとすごい瞬間に出会えるかもしれないと脚を延ばす。里山で虫たちを探し回る。日常の目についたものをパチパチとスナップしていく。
そういう撮影スタイルの場合には小さいカメラが似合っているように思います。
これは体力的なことや物理的なことだけを言っているのではありません。カメラのサイズ感が心理的に影響して、撮影スタイルやリズムを決めているという仮説です。
着物を着るとお淑やかになったり、スーツを着ると自信が湧いてきたり、物や環境が人間の行動に無意識的に影響を与えている事例の一つだと考えられます。
「ゾウの時間ネズミの時間」
25年以上前に書かれた本ですが、いまだに読まれている良書です。
この本に書かれている「身体のサイズによる、それぞれの生存戦略や進化」というものが、今回の「カメラのサイズ」というテーマにとても良く似ていると思いました。
哺乳類は体が大きいほど筋肉が多く力が強いという性質があります。その代わりに多くの食べ物や水が必要だったり、ケガをしやすかったりしてしまいます。
一つの側面だけ見れば大きい方が優れているように感じますが、実際にはそれぞれのサイズには環境への適応があり優れているのです。
ただ本書から今のデジカメが学べることとして、環境の突然変異には小さい生物の方が有利であるとの記述が、デジタル化という環境の変化への対応力と重なると感じました。
全ての内容をデジカメの話に置き換えながら読んでみると、妙にしっくりとくるところがあり、ニヤニヤしてしまいました。
デジタル化が目指す方向とサイズ
ベストバランスというものは、人がそれぞれですが、
この夏に起きたミラーレスへの流れは、よりデジタル的なものを進んでいると考えることもできるのですが、もしそうであれば小さいミラーレスカメラの方がそれをより味わえると私は考えています。
デジタル化の本質は、より多くの状況と場所で撮影をおこない、より多様な表現に広げ、共有と活用につなげていくことだと考えられますが、活動範囲を広げやすく、複数のレンズをも持ち歩ける小さなフォーマットのカメラの方がその目的に合っていると思っているのです。
レコードがCDになりその後メモリーオーディオになっていったように、それまでの物理的な制約を無くし沢山の音楽をいつでも聞けるように小さくなっていくのではなく、液晶テレビやスマホのようにデジタルの進化によってより大きくなっていく道をカメラも進むのでしょうか?
これまで銀塩カメラや一眼レフカメラでじっくりと写真を撮ってきた人にとって、無理をしてデジタル的な撮影を目指す必要はありませんが、表現を追求する気持ちは作品を撮るカメラマンにとって共通の想いですので、カメラのサイズを思い切って変えてみて、撮影リズムの変化を試してみるのも一つの方法ではないかと考えてみたりするのです。
貴重な高級小型カメラメーカー
ひとつのメーカーのなかで製品ラインナップを作っていると、どうしてもヒエラルキーとかフラッグシップという概念や戦略が生まれてきてしまいます。そうなると色々なところに差を作っていかなければならなくなります。
今回のフォトキナでパナソニックがフルサイズ機を発表したことで、小さいカメラがフラッグシップのメーカーはオリンパスだけになりました。
それ以外のメーカーでは、大きいフォーマット用のレンズもある程度数を売らなければならないため、ビジネス的に下のクラスを作っていかざるを得ません。
今後、小さなフォーマットのカメラが、大きいフォーマットより価格が高いという逆転現象を起こさないようにするのであれば、最高の技術を惜しみなくつぎ込んだ小さいカメラが欲しい場合には、オリンパスしか選択肢が無いということになってくるのかもしれません。