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【良書】子供の「ふつう」は親で変わる。教育格差を埋めるには、現状把握と親の愛 | 教育格差 松岡亮二 | #塚本本棚

【良書】これで1,000円は安い。当たり前だと思う事も多いが、頭に入れておくべき事を大量に吸収できる。

非常に冷静に淡々と残酷なファクトが並べられている。子供の「ふつう」は親によって作られている。親の責任は重大だとつくづく感じる。筆者は社会全体にこの事実を知って欲しいようだが、悲しいかなこの本で救えるはずの層は、大半がこの本を手に取らないだろう。


今日は「教育格差( https://amzn.to/3m4BA6p )」松岡 亮二 (著) #塚本本棚


【紹介文】
出身家庭と地域という本人にはどうしようもない初期条件によって子供の最終学歴は異なり、それは収入・職業・健康など様々な格差の基盤となる。つまり日本は、「生まれ」で人生の選択肢・可能性が大きく制限される「緩やかな身分社会」なのだ。本書は、戦後から現在までの動向、就学前~高校までの各教育段階、国際比較と、教育格差の実態を圧倒的なデータ量で検証。その上で、すべての人が自分の可能性を活かせる社会をつくるために、採るべき現実的な対策を提案する。


【書評】
本書は「環境要素、親が教育に熱心かどうか、親の学歴がどうだったかで明確に格差がある」と述べており、そのファクトを冷静に並べています。親次第、環境次第で子供には格差が起こっているという世の中の認識を、淡々と”答え合わせ”するのが本書の役目。

結論として親の階層・地域・学歴による教育格差があるということが証明されていますが、親としては少なくとも、本書のファクトを踏まえ【環境(どういう要素が”環境”に該当するかは本書に譲る)をみんなと揃えてあげること】がまずは大事だなと再確認しました(学歴・地域は動かしにくい)。

個人的には更に、”地頭”や”良質で多種多様なコミュニティ”も大切であると感じる事から、本書の内容を最低限頭に入れながら、より未来志向の教育を子供に提案(強制ではない)できればなと思います。なぜなら本書は2019年7月出版の書籍ながら、データは2015年のものが多く、2015年の高校生のデータは2000年時点での親の教育指向性(高偏差値主義、大学に入れば安泰思考)に寄っていると考えられます。しかしながら、2020年にまだ1歳の我が子は、大学に入れば安泰という前提すら壊れる未来にいるのだと感じています。


僕が教育に意識的に介入する場合は、これらを踏まえてより未来志向的でなくてはならないと感じます。

それにしても、「そうだろうな」と思っていたことが淡々とファクトとして明示されており、”親次第で子供の「ふつう」はこれほど違う”という事実には、身の引き締まる思いがします。


【本を読んで考えた・メモ】
・親の学歴(特に父親)によって子の学歴は変わっていく。親が学びの必要性をわかってなければ、子はその影響をうける

・”敢えて極端に例えるのであれば、生まれた時点で当たる確率80%と35%の宝くじのどちらかを渡されていたようなものだ”

・ロジックのない親は、子の教育に対するフローを組めないだろうし、与えてあげられないだろう(意識的介入が出来ず放任主義になりがち)

・親が教育に無自覚な場合、子が自発的に探し選択肢を見つけ、経験のない親を諭し、予算を引っ張ったり、その他もろもろの許可を得てまでして大学に行くのに比べ、親に自覚がある場合は、物心ついたときにはすでに親は多種多様なマイルストーンと予算を準備していたりする。そして親もそこに到達した経験がある為、そのプロセスへのアドバイスも出来る。これらが格差を生む

・親が学校教育の勝者ではない場合、親が学校から得たものは「無力感」と「落胆」であり、教育に介入することに消極的になる

・親に語彙力がなかったり、教育に関心がない場合、子に対して指示的、強制的になることで、子供はコミュニケーション能力やネゴシエーション能力などに差が出る

・親が大学卒の場合、0歳時の時点で親からの意図的教育、生活の構造化が行われるが、非大卒の場合は、自由放任や強制指示の傾向が高く、1.5歳の時点ですでにその後の学校文化への適性差が出現している

・「なぜそれをしてはいけないか」を言葉で説明する行為を「よくする」と答えた割合は両親大卒層が高い一方、理由を説明せず「ダメ」や「いけない」とだけ叱るのは両親非大卒が最も高い

・両親が大卒か非大卒かによって、子供の習い事の開始時期や利用率に明確な差が出現している。習い事の種類に対しても言及があるが、習い事には旬があるので、今どの習い事が価値が高いかは今後の研究課題の一つ

・未就学期の意図的教育の差は、小学校に入っても縮小しない

・というか、飛び級制度日本も作ってほしいな。さっさと卒業させて世に出した方が教育費も抑えられていいんじゃないかと思うんだけど

・両親大卒と両親非大卒の世帯収入格差は、養育の15年間で3700万円も差が付く

・父母の読書量が高いほど、子の読書量も高くなる

・所得が原因か?と思えど必ずしもそうではないのではと思うのは、金銭を必要としない図書館の利用も、非大卒は少なく大卒の方が高い

・小4時点での(非大卒両親と大卒両親の)子の偏差値60以上の割合は、大卒両親で育った子が非大卒両親で育った子の3倍以上の割合で偏差値60以上となり、小4時点で生まれによる格差は顕在化している

・小1時点での読み書きの能力は、小4時点での算数や理科の学力に強く関連する。もちろん小1時点での読み書きの能力は、未就学児時点での読み聞かせなどの意図的教育に関連する

・さらに言えば、小4学力は中1学力とも強く関連する

・大卒と非大卒両親の小学校6年間での子供の学外学習時間は小4辺りから差が出始め、最終的には500時間以上の差となる

・大卒と非大卒両親とでは、学校行事に対する参加率にも差がある。大卒両親の方が率先して授業参観や面談、学校行事への参加を行っている

・学内活動への参加によって、担任教師や両親間コミュニティが出来たり、同じ学級の子供の様子も知れるので、我が子に問題が起きた場合にも早期に発見できる様になる。また親子間にも学内での共通の話題ができ、子供の関心領域などを認識しやすくなる

・「勉強が良くできる子たち」は、大学卒両親が多い学校に大きく偏って存在している

・大卒両親が多い学校の児童は通塾率が高い

・(中学校での)学力上位層は私立に集中しており、偏差値60以上の学生の割合は公立14%に対し、私立40%

・中学では学力上位層は私立に移る。公立残留組は強力なライバルが私立に移り、ペースメーカーを失った状態で高校受験を迎える

・中学でも生徒全員が大学を目指す学校もあれば、22%の学生しか大学を目指さない学校もある

・大都市部では中学1年の夏時点で2人に1人が通塾している。周りの環境で学生の「ふつう」は変わる

・これら15年の成果が、いよいよ高校によって顕在化される

・高校ではアルバイトをする生徒が0%の学校の偏差値の平均は57だが、4人に1人以上がアルバイトをしている学校の偏差値は41

・親が子供の勉強を応援することすら環境によっては「ふつう」ではない。7割の親が子供の勉強に無関心、または奨励しないという高校もある

・大学進学が前提の高校と就職が前提の高校があり、それらの学校の生徒の「ふつう」は異なる

・家庭環境が低くとも、それを本人の力で打破する子の割合は10%ほどは存在する

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