ホラー映画観賞初心者がホラーというジャンルにおける作中での動機や経緯、背景、オチの扱い方について思ったこと。


 ホラー映画をきちんと見たことって無かったんですが、友人に誘われたことがきっかけで映画館にて3作品観ました。
 「ミンナノウタ」「スイート・マイホーム」「禁じられた遊び」の3作品です。
 作品の内容についてはネタバレになるようなことを言うつもりはないですし、そもそもホラー映画について明るくないので、出来不出来みたいなことも特に言及するつもりもないんですが、ホラー映画ってさじ加減が難しいジャンルなのだなと感じた点があったので、そこについてつらつらと書いてみます。
 ホラーっていうジャンルは基本的に様々な怖がらせ方をしてナンボっていうものだと思うんですよ。
 怖がらせ方にも色々あるとは思いますが、大きく分けるなら怨霊や霊能力に相当するものが様々な怪異を起こすパターンと、不可解な出来事が起こった上で全ては人間の仕業だったというパターンのふたつかと。
 日常が非日常に侵略されていき、恐怖に陥れられるという流れがあり、その元凶が超常的なものなのか、人間なのかですね。
    で、怨霊の類の場合、何故怨霊になったのか。
 何故、生きている人々に恐ろしいことをするのか。
 そして、主人公たちがそういった怨霊にまつわるアレコレを知り、どういうかたちで物事を収めるのかという起承転結になると思うんです。
 まぁどうしてもストーリーって基本的にはこういう流れになりますから。
 そして、ここからが本題なんですが、ホラーってミステリーの要素も含んでるんですよね。
 謎めいた不気味な出来事が起こり始め、これは現実なのかどうかと自身や周囲を疑い、徐々に現象の原因がわかってきて、それは怨霊の仕業であり、そして怨霊の正体や思いが明らかになっていき…っていうこの謎が明らかになっていく過程はミステリーです。
 元凶が人間の場合も概ね同じではありますよね。
 謎めいた不気味な出来事は超常的な存在の仕業なのか、それとも人間の仕業なのか、はたまた自分自身がおかしくなってそういうふうに思ってしまっているだけなのか。
 そんな現実に苛まれ、心をすり減らしていっている中で徐々に真実が明らかになっていくという過程がストーリーになります。
 ただ、ホラーにおけるこの「謎が明らかになっていく」という点。
 どういうストーリーなのかや、どういう見せ方をしたい作品なのかにもよりますが「謎めいているときが最も怖い」「理屈ではない出来事がとにかく怖い」ということを踏まえて考えると、謎が明らかになっていくと怖くなくなっていくんですよね。
 主人公の過去と現在、そして今現在襲われている恐ろしい出来事にはリンクしている部分があり、ストーリー部分のテーマ性になっているというような「謎が明らかになったことが物語そのものの重みに繋がる」という作りの場合は、どこまで語ってどこまで語らないのかという問題が生まれるじゃないですか。
 主人公のバックボーンや怪異の元凶のバックボーンをチラ見せしてくるなら、きちんと語ってくれよと思いはするものの、何もかも語られると興醒めですから。
 これがミステリーなら事件が起きて謎を解決するときには、きちんとひとつひとつ理屈で原因を究明して説明して、全てを明らかにするのが筋ですが、ホラーでいちいちそこまでやってると大体は蛇足ですからね。
    なので、必要最低限説明すべきことはどのラインなのかという見極めは難しいものなんだなとホラー映画を観て感じました。
 怨霊にも事情があって~とか、この事件を起こした人間にも事情があって~というようなことをホラー映画でやりはじめると蛇足になりますよね。
    「そりゃまあ誰しも事情はあるでしょうけど」となります。
 必要なくだりではあるんですが。
 その内容によっては事件の元凶に感情移入することが出来たり、悲しい境遇に心揺さぶられたり、登場人物やストーリーに深みや重みが生まれますからね。
 とはいえ、ことごとくきちんとした事情があって、それを説明されていったら、観客を恐怖させる作品としてはテンポ感が悪くなるし、それこそ観客たちが非現実から現実世界へ戻ってしまうんですよね。
 ありえないことがありえそうに思えてくることは恐怖やリアリティーを生むので大事なことですが、こういう経緯でありえないことが出来るようになりましたであるとか、あってはならないことをしてしまいましたという理由付けや説明をどれくらいするのかであるとか、映画の中でそれにどれくらいの尺を使うのかであるとか、そういうところに意識を向けると難しいなぁと思ってしまうのです。
 僕のような物事の見方や考え方をする奴がホラーという観たことのなかったジャンルの映画を立て続けに観たからそう思うのでしょうか。
 説明されても説明されなくても、納得出来ても出来なくてもそう思うのかなぁとも思いますし。
 ただ、説明するならするでそれ相応の理由や動機をきちんとしたかたちでストーリーに絡めていってほしいなーとは思ってしまうわけで。
 で、中途半端な描き方をするなら、一切説明しない方が良いのではとも思ってしまう。
 怨霊の仕業なら仕業で「生前に色々あって怨みつらみが強すぎて怨霊になった」とか、人間の仕業なら仕業で「悲しいことやつらいことや色々あって怨みつらみがつのって精神的におかしくなってしまった」みたいなふうにしかなかなか説明出来ないし。
 ホラーにおける元凶の動機や理由のバリエーション作るのは難しいですよね。
 それなら「何もわからないままに恐ろしいことしてくるのが1番恐ろしい」が正解だとは思います。
 ただ、これだと今度はストーリーがきちんと作れないですけれど。
 ストーリーが全くといっていいくらいに無い、ただただ恐ろしいことが続くだけの映画になるはず。
 パニック映画ならそれでも良い部分はあると思うのですが。
 狂暴な動物に襲われるとか、閉鎖空間から脱出するとか、そういう系統の話であるなら「助かりたい」という本能的な理由や動機が主人公の最優先事項になりますから、作中で主人公が他のことは二の次にしていても、描写不足が目立っても、大体のことは致し方ないと思えはするので。

 今回はホラー映画を観て思ったことを書いてみました。
 「作り方難しいな」っていう視点で観てしまいましたね。
 はじめて経験するものって実に興味深いです。
 素直に面白かった部分と、引っ掛かりを覚えた部分と。
 こういうところで引っ掛かる僕はホラー映画と相性悪いのかもしれませんが、でも面白かったですよ。

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