なんちゃって旅行

真夜中にYouTubeで東京都内のライブカメラを観るのが好き。

私が住んでいる地域も日本の中ではかなり都会で有名な繁華街があるが、憧れであるあの《東京》には勝てない。

特に歌舞伎町と渋谷スクランブル交差点。

歌舞伎町は煌びやかさと喧騒・猥雑が混じりあった空間に、夜中の3時でもまるで時差があるかの様に多くの人がひしめき合っている。

行きつけの居酒屋、風俗店、ガールズバーの入口へ心踊るまま吸い込まれてく東京都民。

渦巻く街と見世物の様な人々を嘲る為にやってくる観光客。

際どい衣装を着た客引きにデレデレで思わず立ち止まる人。

ただでさえ狭い道を、蟻の大群かのような人だかりの中でノロノロと走る車。

流石《眠らない街 歌舞伎町》と名がつくわけだ。

一方、歌舞伎町の雰囲気とすこし違った渋谷スクランブル交差点も、どこへ行くのかは知らないが、その名の如くみんながスクランブルをして歩いてゆく。

翌日も朝から仕事がある筈なのに、へべれけでお互いの肩を担ぎフラフラと歩くサラリーマン。

まるで上京したての浮かれた気持ちで｢私達は東京に住んでいる｣みたいな格好をつけた感情をもちながら、実は何の尖りもなく芋くささのある女性達。

皇居周りをランニングしている気を引き締めた様な人達かと思いきや、ただお喋りをしながらのらくらと楽しそうに走っている6人程の友人らしき人達。

サバンナの獣みたく、乗車しそうな雰囲気のある人の様子を伺う無数のタクシー。

よく東京に住んでいる人は｢東京なんて住むところじゃない｣｢人が多すぎて疲れる｣と愚痴をこぼすが、東京外に住んでいる我々からすればその喧騒に憧れをもち、自分達の知らない世界をライブカメラで覗いているのだ。

名付けて《なんちゃって旅行》

みんなが眠っているあいだも、休日の昼間も、私は《東京》を旅行しているよ。