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美味しい記憶
「何も手伝わなくてごめんね。
感謝して、いただきます」
母はご飯を食べる時必ずこう言う。
食べる事が大好きな母は
好き嫌いなくなんでも食べる。
スパイスカレーやタイ料理も食べちゃう。
なので献立は和食が多いが、
私たちの食べたい物を作れてしまう。
何を食べても美味しいと
喜んで完食してくれる。
「何か食べたい物ない?」
と聞くけど
「うーん、なんでも食べるわよ」
と答えは聞けない。
以前なら
「餃子とビール」とか
「うなぎ」とか
言ってくれてたのに…
母の好物を思い出すけど
本当は何が好きだったのかよくわからない。
「何か一つ言って!」
って無理矢理聞き出す。
すると
「ソフトクリームが食べたいな」
とまさかの返事が返ってきた。
「えっソフトクリーム?」
(ってこの間、道の駅で食べたからかな…)
「もう何年も食べてないから食べたいな」
との事。
「わかった。今度食べに行こうね。」
と約束する。
最近食事中はよく子供の頃の話をする。
水飴買って紙芝居を見た話
揚げたてのコロッケの話
焼きそばの話
お好み焼きの話
月見団子の話
食べ物の話ばかりだけど
どれも楽しそうに美味しそうに
何回も何回も話す。
今日食べたお昼ご飯は忘れちゃうけど
子供の頃の美味しかった記憶は忘れないのだ。
これから先、母の中で
新しい記憶が無くなっても
子供の頃の楽しい美味しい記憶が残っていたら
それでいいのかもしれない。
すっごく淋しいけど…