お誕生日
母のお誕生日、前日
「今日は私の誕生日よ。」
とにこにこでテーブルにやって来た。
「お母さんの部屋のデジタルカレンダーを見てみて。」
と促す。
「あら、明日だった…」
このやり取りをこの日は何度もやった笑
誕生日、当日…
朝起きても何も言ってこない。
すっかり忘れてる笑
そして今日、数日遅れの母の誕生日のお食事へ。
「お誕生日には何が食べたい?」
「うーん、うなぎ!」
というお答え。
引っ越してきてから行こうと思っていた鰻屋さんへ予約して、デイサービスのお休みのお昼に
行ってきた。
車で30分ほどの所にあり、すぐそばには海が広がる港町。
お店の近くに行くと炭で燻された
こうばしいタレの香りが漂う。
席で待つと鰻重が運ばれてきた。
「お誕生日おめでとう!いただきます。」
3人で笑顔になって鰻重を食べた。
美味しく満腹、満足になり少し港を
母の手を繋いで歩く。
初めの頃は手を繋ぐのが少し恥ずかしかったが、
最近では私がすっと手を伸ばすと
母もさっと手を自然に握る。
「観光してるみたいだね。」
「空が綺麗だね。」
なんて会話をしながらジェラート屋さんを目指す。
別腹のジェラートを海を眺めながら食べ、
帰り道、お誕生日ケーキ買って帰った。
家に着くと母は
「疲れちゃった」
と横になった。
3時間ほどのお出かけも疲れてしまうのか…
なかなか一緒のお出かけも難しいなぁ。
夕食後も早めに寝てしまった。
ふと来年の誕生日の事を考える。
また鰻屋さんに行けるのだろうか。
また手を繋いでジェラート屋さんに辿り着けるのだろうか。
そんな事を考えても仕方がないか。
また明日、お誕生日ケーキでお祝いをしよう。
母はロウソクの火をにこにこしながら
消してくれるだろう。
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