こやけ/書評・読書感想

好きな本の書評・感想を書きます

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初めまして

初めまして。 こやけです。 好きな本の書評を書いてみたいと思い、noteを始めました。 次回はレイチェル・カーソン(上遠恵子訳)の「センス・オブ・ワンダー」についての記事を公開する予定です。 よろしくお願いします。

    • 詩との出会い2 「私の胸は小さすぎる」

      よく晴れた日、朝5時に起きたときにオレンジ色の日光が部屋に差し込んでくるのが嬉しかった。最近は日が昇るのが早過ぎてすぐに昼間みたいな白っぽい光に変わる。 前回詩との出会いをテーマに「わたしを束ねないで」を紹介した。 この詩は中学校の授業で知り、いつもの授業とは違うことをしているような刺激を受けた。だが、それ以来詩を読もうと思ったわけでもなく高校でも詩を読む授業はなかった(はず、あったとしても記憶に残るほどではなかった)。 本格的に詩に興味を持ち始めるきっかけになったのは大

      • あなたのために願う人『サイレンと犀』

        今回紹介する本 『サイレンと犀』岡野大嗣(書肆侃侃房) 私は歌集を買うことはあまりない。書店でなんとなくいつもと違うものが読みたくなり『サイレンと犀』を手に取ってこの短歌に出会った。その時の私はうつ病の症状が重く苦しい時期にいた。だからインターネットで自分の気持ちについて検索していた。すると自分と同じように苦しんでいる人はたくさんいることがわかる。そういう気持ちを昇華した創作物もいろいろと知った。でも同じ気持ちの人がいて、いろんな対処法があって、だからなんだ。なんか何も救わ

        • ひそかに毒を味わい、飲み込む『有毒植物詩図鑑』

          今回紹介する本 『有毒植物詩図鑑』草野理恵子(しろねこ社) 右のページに有毒植物の絵、左のページには有毒植物のための詩が書かれている。詩が横書きなのも珍しく、図鑑として読ませている。 私はスズランが一番好きな花なのでスズランの詩がうれしかった。 スズランは小さく白い鈴のような花をつける。かわいらしい見た目だが、強力な毒を持っている。花粉にも毒が含まれ、飾るときには食卓や子どもの手の届くところは避けるなど注意が必要である。 「母の枕元にスズランを/花束にして供えて」とある

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          詩との出会い「わたしを束ねないで」

          京都の大学に通うため一人暮らしをしていた頃、イオンモール京都の大垣書店でなんとなくいつもと違うものが読みたいと思い『ポケット詩集』を購入しました。初めて読む詩もありましたが、とても懐かしい詩がありました。新川和江の「わたしを束ねないで」です。この詩と初めて出会ったのは中学生の頃です。そのときの感覚がよみがえってきました。 全文です。 中学生の頃、私は理由のわからない言語化できない苛立ちを抱えていました。何かにつけて文句を言うことでそれを発散し、人を困らせることもありました。

          詩との出会い「わたしを束ねないで」

          せかいに溶けていく過程『そらまでのすべての名前』

          今回は張文經の『そらまでのすべての名前』を紹介する。 私はタイトルに惹かれてすぐにこの詩集を購入した。そらまでのすべての名前、そらまでのすべての名前、これより惹かれるタイトルに出会ったことがない。そして今、一番好きな詩集かもしれない。 作品の一部を紹介する。 呼吸から聞き取ったとおい森が広がり、ここからさらに展開していく。まず呼吸から森を聞くという発見が魅力的である。 この詩集は、特別に目を引く詩がある、というよりはすべての詩が同じ息づかいで書かれているという印象を受けた

          せかいに溶けていく過程『そらまでのすべての名前』

          今日も生き残ったということ『あの日、水の森で』

          今回は草間小鳥子の詩集『あの日、水の森で』を紹介する。 他の作品には、『手のひらに冒険』、『ビオトーブ』、『源流のある町』がある。 私はこの詩集を読んで寺田寅彦の「柿の種」のことばを思い出した。 これと同じ話ではないのだが、少し似ていることを思った。私が見ている日常の世界にも透明の壁があって、私にはそれを見ることはできないし触れることもできない。でもその壁を通り抜けてしまって、そこで見えたものや触れたものを紹介してくれる。そういう人がいる。そういう人のことを「感覚が突き抜

          今日も生き残ったということ『あの日、水の森で』

          作品と痛み『神に愛されていた』

          今回は木爾チレンの『神に愛されていた』を紹介します。 木爾チレンといえば、2021年に『みんな蛍を殺したかった』が大ヒットしました。 この会話の部分が『神に愛されていた』のテーマになっていると思います。この小説がそのようにして書かれたことは言うまでもないでしょう。 若い人気女性小説家の物語でできていて、リアルで赤裸々とも思えるほど痛々しさのある感情描写が続きます。 小説家東山冴理の絶望はこれだけでは終わらないのですが、個人的に胸が「ギュッ」っと苦しくなったところです。美人

          作品と痛み『神に愛されていた』

          【日記ブログ】2024.5.25朝活読書

          五時にアラームをセットしていたのですが四時に目が覚めました。 白湯を用意して一時間読書をします。 いつもより早く起きた分予定を繰り上げます。 午前四時 太陽が昇ってくる前、朝焼けが見られました。 燃えるような、というよりは空に紅が滲んでいるような朝焼けでした。 人の立てる音が沈んでいて、窓を開けてもごくたまに車が通るくらいで鳥の鳴き声だけが聞こえます。 とても涼しく、すごしやすい朝です。 朝早く起きると、昼間がどれだけ騒がしいかわかります。 朝食の前にコップにお湯だけ注いで

          【日記ブログ】2024.5.25朝活読書

          さびしさをひとつずつ『微熱期』

          今回紹介するのは峯澤典子の『微熱期』です。 2022年11月に放送された「silent」というドラマで、聴力を失った佐倉想(目黒連)が読んでいたことで話題になりました。 『微熱期』の他には『水版画』『ひかりの途上で』『あのとき冬の子どもたち』を出版されています。 詩集といえば基本的に複数の詩作品を集めたものになりますが、一つの詩を読み終わり次の詩に移るとき、ぶちんと世界が切り替わるわけではなく前の詩で感じた詩の匂いがまだ漂っていることがあります。『微熱期』では特にその印象が

          さびしさをひとつずつ『微熱期』

          気づけなかったもの『センス・オブ・ワンダー』を読んで

          母を失った甥のロジャーと共に暮らしていたレイチェルは、ロジャーが赤ちゃんの頃から自然の中に連れ出し探検にでかけていました。一緒に探検を楽しむことによってロジャーは様々な生き物に興味を持ち美しいものを発見します。 レイチェルは、「センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性」が倦怠や幻滅などに対する解毒剤になると述べています。 日常生活の中で私は、世界のなにもかもがつまらないような感覚になることがあります。そんな生活を続けていました。 しかし、この本を読んだ後、

          気づけなかったもの『センス・オブ・ワンダー』を読んで