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映画「94歳のゲイ」(2023年日本/吉川元基監督)

主人公である長谷さんは、1929年生まれの94歳のお爺さんです。

かつて同性愛は精神疾患とされていたため、長谷さんは、ゲイであることを誰にも打ち明けられず孤独の中で生きてきました。

LGBTを取り巻く環境は1990年代から少しずつ変わっていきましたが、そのときの長谷さんは既に60代になっていたため、新しい流れについていくことができなかったそうです。

しかし90歳を超えて、自分の介護を担当するケアマネージャーが同じゲイであったことをきっかけにLGBTの活動に参加し、そこで仲間を見い出して、徐々に心が解放されていく様子が静かに描かれていきます。

なお、この映画は、雑誌「薔薇族」(1971年に創刊・2004年廃刊)の編集長であった伊藤文学氏へのインタビューや、1990年代から始まったLGBTのパレードの映像などを織り交ぜながら、日本のLGBTの歴史を振り返る内容にもなっているため、記録映画としても非常に価値が高いものとなっているように思われました。

インタビュアーが最後に長谷さんに「もしも今の時代に生まれたら、どうしたかったですか」と尋ねたところ、「好きな男の人と一緒に暮らしたかった」と笑いながら回答していたシーンが、とても印象的でした。

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