映画「かづゑ的」(2023年日本/熊谷博子監督)
ハンセン病(らい病)回復者の宮崎かづゑさんを追った、8年間のドキュメンタリー映画です。
何度も泣いて、そして笑いました。
私は今後、「これまでみた中で一番良かった映画は?」と聞かれたら、この作品を挙げることにしようと思っています。
それくらい、胸にずしんと響く、凄みのある傑作だったんです!
それにしても、かづゑさんの聡明さには驚かされます。
何よりも、彼女が発する言葉がどれも秀逸!
そんな彼女の言葉や行動を通じて、人間が生きていく上で重要なことをたくさん教えてもらいました。
あわせて、「ドキュメンタリー」の魅力についても改めて考える機会にもなりました。
多くの人には「人間とはこういう場面ではこういう振る舞いをするものだ」という固定観念があると思うんです。
例えば、お墓参りをするときは泣いたりお線香を炊いたりするものだという固定観念。
でも、現実の人間の振る舞いというのは、往々にしてもっと「意外」なものです。
実際、この映画のかづゑさんも、亡き母のお墓参りをするときは、ただただ顔を墓石にベターっとくっつけてじっとしているだけなんです。そしてこれって脚本家が想像で書くのではおそらく思いつかない行動なんだと思うんです。
また、人間のちょっとしたリアルな「表情」を捉えるのもドキュメンタリーしかできないことだと改めて実感しました。
例えば、かづゑさんが昔のことを思い出しているときの表情などは、あまりにも複雑なので、俳優の「演技」では再現不可能です。
だからこそドキュメンタリーというのは、こんなにも人の心を動かすんだと思いました。