書籍「時間は存在しない」と「すごい物理学講義」(カルロ・ロヴェッリ著)
いずれも、カルロ・ロヴェッリというイタリアの理論物理学者が書いた本です。
「世界の基本原理に関する最新情報」や「時間の本質」などについて、非常にわかりやすく説明しているので、いずれの本も、世界の見方が変わる本として数々の賞を受賞し、世界的ベストセラーになっています。
しかも、数式がほとんど出てこず、文系の人でも読めるように工夫されているのがミソです。
◆ 「時間は存在しない」(2019年発行)の構成は、次のようになっています。
第一部 時間の崩壊
第二部 時間のない世界
第三部 時間の源へ
◆ 「すごい物理学講義」(2019年発行)の構成は、次のようになっています。
第1部 起源
第2部 革命の始まり
第3部 量子的な空間と相対的な時間
第4部 時間と空間を越えて
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昔は、「空間」や「時間」という絶対的なものが存在し、物質世界はそうした「空間」と「時間」の中に存在していると考えられてました。
多分、今でも多くの人はこう考えているのだと思います。
しかし、物理学が「ニュートン力学」→「電磁気学」→「一般相対性理論」→「量子力学」→「量子重力理論」と発展するにつれ、次のようなことが分かってきたとのことです。
① かつては、物質がなくても「空間」は存在し「時間」は流れると考えられてきた。
② しかし、空間は存在しない。
したがって、量子(物質)は、空間の「なかに」あるのではない。
※ 量子とは、物質やエネルギーの最小単位であり、原子や電子、光子、ニュートリノなどの素粒子などが量子に含まれる。
③ 同様に、時間も存在しない。
したがって、量子は時間の「なかで」展開するのではない。むしろ時間は、量子の相互作用の結果として生じてくる。
また、時間には、過去と未来を区別する方向性もなければ、「現在」とう特別扱いされるべき時刻も存在しない。
④ すなわち、時間や空間とは、あらかじめ存在する絶対的な存在などでは全くなく、量子同士の関係の中で生じるものにすぎない。
⑤ 我々が日常生活で「時間」の感覚を持つのはなぜか?
実は、時間の経過は、人間の内的な感覚(主観的なもの)であるに過ぎない。時間が経過したという意識が己の内側に生じるのは、中枢神経におけるシナプス結合の形成と消滅という物質的なプロセスを通じて、過去が「記憶」として残るからである。
しかしこのプロセスも、単にエントロピー増大の法則に従って生じているだけなのである。
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私自身が十分理解したわけではないので、非常に分かりにくい要約になってしまいましたが、
いずれにせよ、当たり前だと思っていたこと(時間と空間の存在すなど)が大いなる勘違いだった可能性があるということを教えてくれる本は、とても刺激的です。
なお、著者のカルロ・ロヴェッリは、現在有力視されている「素粒子の超ひも理論」に懐疑的で、これに代わる「ループ量子重力理論」によって世界の基本原理を解明しようとしています。