映画「戸田家の兄妹」(1941年日本/小津安二郎監督)
戦前(1941年)に公開された小津作品です。
裕福な戸田家の主(父)が急死し、多額の借金があることが判明します。
借金返済のために家屋敷を処分したため、そこに住んでいた母と未婚の末娘は、
①長男夫婦→②長女夫婦→③次女夫婦と、順番に各家の世話になるのですが、どの家でも厄介者扱いされる・・といった話です。
そして映画を見た感想ですが、
本作品は、戦前に作られた作品であることを考慮すると、当時としては驚くべき2つの視点を持った”名作”であると感じました。
1つ目の視点は「フェミニスト的な視点」です。
当時は「女性が外で働くのは一族の恥」という考えがあったようですが、本作品ではそのような考え方を持つ人物の言動をあえて際立たせて、暗に批判するような描き方をしているんです。
2つ目の視点は「反・階級社会的な視点」です。
当時はひどい階級社会なので、本作品でも使用人の扱いは苛烈です。そしてそんな中で、家の子ども(小学生)までもが使用人に対してぞんざいな口の利き方をするシーンをあえて入れることで、そのような社会を暗に批判するような描き方をしています。
そして私は、戦前にこのような視点を持って映画を作った小津安二郎は、やはり普通の”男社会の視点”を持った人物ではなかったと思うんです。
ということで、私にとってこの映画は、私の仮説である「小津安二郎LGBT説」を補強するような作品となりました。
※ この作品のヒロインは高峰三枝子です。笠智衆はちょっとした脇役で出てきます。