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失敗について


夜の散歩

ある晩、夕食を少し食べ過ぎたと思い、走るほどの気にもならなかったので散歩に出かけた。すると、夜の公園で子供の忘れ物を見かけた。

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お、誰か三輪車を忘れてる……。
「きっと明日必死になって公園に探しに来るんだろうなぁ。ちゃんと持ち主の手元に戻るといいなぁ。」なんて思いながら、夜の公園で持ち主の帰りを待つ三輪車を横目に歩いていく。

すると、今度は商店街のベンチに。

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「可愛いサイズだし、暖かそうな帽子。これもまた持ち主の手元にちゃんと帰ってくれるといいなぁ。」なんて思いながら、昔のある出来事を思い出した。

昔の失敗

これは小学校低学年だった頃の話。
当時流行っていたキックボードを親に買ってもらい、気分るんるんで友達と遊んでいた時の事。
遊びに行った公園(結構広い公園)の一角にキックボードを置いて友達と遊んでいた。

帰る時間になってキックボードを置いていたはずの場所に戻ってみると、キックボードがなくなっていたのである。
日が暮れるまで半泣きで探したが見つからず、名前なども書いていなかった為、結局自分の手元に戻ってくることはなかった。

それから暫くの間、何故常に自分の視界に入る所にキックボードを置いておかなかったのだろうとひどく悔やんだ。
そして、今でもキックボードを見るとその苦い体験を思い出す。

大事なものでも何かに夢中になっている間に忘れてしまったりすることは誰にでもある経験だと思う。

大事な忘れ物(疑惑)

先日、大変貴重な忘れ物が店(筆者の勤務先)にもあった。

ある土曜日の雨降りの夕方、外は完全に日が落ちて暗くなった頃。
退勤したばかりで一度外に出て行ったアルバイトさんが自分の元に戻ってきたのが見えたので、「お、何か忘れ物?」と尋ねると意外な答えが返ってきた。

「駐車場で子供が自分の家の車が無いって泣いてて。トイレに行ってる間に置いてかれたっぽいんです。とりあえず、他のバイトに見てもらってるので対応お願いします。」

「いやいや、さすがにそんなことないでしょ!とりあえず一緒に親探してくるわ!」と笑いながら子供の元へ向かう。

他のアルバイトの子に「寒いから一度中に入ろうか。」と言われ、店内に連れられている所だった。子供は4~6歳くらいの女の子。今にも泣きだしそうな顔をしていて、寒い冬の雨降りの中で上着も着ておらず、そんな恰好のまま駐車場でしばらくの間車を探していたため凍えていた。

アルバイトの子にお礼を言い女の子に話しかけた。
「こんばんは。誰と来たの?お母さん?じゃあ、一緒にお母さん探そうか!」
お母さんの服装の特徴など訊き、該当するお客様を一緒に店内を回って探し始めた。

「買い物に来て子供を置いていくなんて、そんなホームアローンみたいなことあるかよ。笑」と思いながら店内を一周した。

「い、いないねぇ……。そうだ、もう一回駐車場を探してみようか!他の大きい車に隠れて見えなかっただけかもしれないし、別の駐車場にいるかもしれないしね!どんな車かわかる?」

女の子「白のVOXY」

「白のVOXYね、わかった!(で、でかい。他の車で隠れるわけがない。というか、車種まで答えれるなんてしっかりした子だな。)」

まず、メインで使用されている第1駐車場を探したが見当たらなかったため、第2駐車場に向かった。お店にはよく来るのかとかいつも車で来るのかとか聞きながら。
このあたりから、この子は本当に置いて行かれたのかもしれないと思い始めた。
結局、第2駐車場を探したが見つからず、一度女の子を連れて店内に戻った所で確信に変わった。

この子は本当に置いて行かれた。

大事な忘れ"者"(確信)

それからこの子の名前や年齢を訊いた。
4歳だということがわかり、通っている幼稚園もわかった。暫く待って親が迎えに来なかったら幼稚園に電話をかけてみようということになった。
待っている間に色々な話をした。
訊くところによるとこの子は4人姉妹の次女で、この日は姉妹全員と母親と来ていたそうだ。

「妹は2歳と0歳?そうなんだ、可愛いでしょ?(そりゃお母さん大変だよ!)」

「今日のご飯は焼肉食べに行くの?羨ましいな!(まぁ、残念ながら君置いて行かれてるけどね)」

そんな風に話しながら、女の子も時折クスクス笑いながら待つこと約20分。

進展なし。

時間もあまり遅くなると幼稚園の職員さんが帰ってしまう可能性も高くなるため、幼稚園に電話をかけることに。
ネットで調べたら幼稚園のお預かり時間を30分以上過ぎていたため少し不安にもなったが、無事幼稚園に繋がり、事情を説明して職員さんから連絡を取ってもらうことになった。
じきに折り返しの電話が幼稚園からあった。

「お母さんと連絡取れました。今から向かうそうです。」

今から!?電話で気付いたのかよ!いや、それにしても連絡がついて良かった。

それからしばらくしてお母さんとお姉ちゃん(といっても低学年くらい)が迎えに来て、「ご迷惑をおかけしてすいません!」と何度も謝り、子供にも申し訳なさそうにしていた。
帰る時「焼肉楽しんでね!」と言ったら、お母さんは恥ずかしそうに、女の子は安堵の気持ちもあってか満面の笑みで手を振り帰っていった。

失敗の後

その後しばらくその家族のことを考えていた。
あの家族ではこの失敗をしないためにこれからどうするんだろうか。
子供が勝手にどこか行かないようにリードでもつけたりするのだろうか。(過去にそういう子を見たことがあるが、それを見た時は複雑な気持ちになった。)

それとも、あの子たちが大きくなるまでは点呼でも取るようになるのだろうか。
そして、子供が大きくなった時に友達との会話で
「うちではお店行ったら、帰りに車に乗る時は必ず点呼があってさぁ、マジめんどくさいんだよねー!」
とか
「お母さん昔私を置いて帰った事あって、ホントひどくなーい?」
とか言うのかもしれない。
家訓は「点呼なしには帰れない」だったり。

もしそうなったら、今回の失敗によりその家族での新しい習慣ができることになる。点呼の習慣ができなかったとしても、少なくともこれからの行動や意識を変えないわけにはいかない。

失敗にはそういう力がある。

失敗がいっぱい

これはこの家族の中だけの話だが、これがもっと大きな範囲で、地域、国、世界を大きく変える失敗はたくさんある。そんな失敗を沢山知ることができる面白い図鑑を手に入れた。いろは出版から出版されている『失敗図鑑』というもので、先日テレビでアーティストの小沢健二さんが紹介していたものだ。

これを読んでいると、失敗がこの世の中を作っているのがよくわかる。
そして、今までの自分の考えにあった「失敗した後どうするかが大事。」という考えが変わり始めた。
もちろん、失敗した後も大事だが、この失敗図鑑を見ていると失敗するまでの過程もとても大事な様に思えて仕方がない。そうなると失敗ってする前も後もヒントが沢山あって、ひょっとしたら今だって何かの失敗に向かっているかもしれないし、一見成功だと思っていたことが失敗だったりするのかも、なんて思うようになった。
そもそもお母さんが4人もの小さい子供を連れて行かざるを得ない状況(きっと仕方ないんだろうけど)だとか、今回の件がなくてもなかなか深刻のような気もするし。

そして、やはり失敗を恐れずに行動を起こす勇気と常に今を疑い続けることは大事なんだな、と再確認しました。
あと、失敗をした時、思い出した時のあの何とも言えない、少し恥ずかしいような、胸が締め付けられるような苦い気持ちって大事だなぁとも。

皆さんが最近した失敗は何ですか?

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