枝の先
津屋崎
福岡でまず行きたかったのは津屋崎という町。
ここで町おこしに力を入れている津屋崎ブランチという所があると、以前泊まった高松のゲストハウスのオーナーさんに教えてもらっていた。
最寄の駅から(これまた1時間ほど歩くのだが)歩いて向かっている最中、古本屋さんをマップ上で発見したので寄る事にした。
木造の素敵な建物に着いたが看板などが見当たらなかったので、本当にこの場所で合っているのか不安になる。
中を覗くと人がいたので少し扉を開けて尋ねると、場所は合っていたが現在は休業中という事だった。
どこから来たのか訊かれたので地元が名古屋だという事を伝えると、せっかく来ていただいたのでと言って特別に中を見せていただくことに。
中に入ると他に大人と子供が4,5人ずついた。
挨拶をして、本がある奥の部屋に通してもらい、並べられた本に目を通す。じっくりと本を見た後、お礼をして出ていこうと部屋から出るとショップカードが目に入ったので手に取ってみた。
すると、なんとここも私設図書館としての活動をしていたのだ。
そんなことはつゆ知らずに入ったというのに、なんという引きの強さだろうと自分でも思った。
興奮を抑えて私設図書館としての機能もあるんですね、と先程案内してくれた女性に話しかけると、たくさん興味深いお話を聞かせていただいた。
そして、この日は4月から始めようと思っているフリースクールのお試しをやっているという事だった。
あぁ、ここにも同じような想いを持った人がいる。
と勝手に感動していると、「よかったら一緒にお昼ご飯どうですか?もう少しお話もしてみたいし」と昼食をご一緒させていただくことに。
更に、こうして初めて会った人をいきなりご飯に誘ったりすることに関してこのような事を言っていた。
「初めて会った人をこうしてご飯に誘ったりするのも、子供たちにとっていい勉強になる。こういう経験でこの人は安全か危険かという感覚が身についていくから」
今の世の中では、とかく「知らない人にはついていくな、話すな」等と教わるが、本当に教える必要があるのは知らない人がどんな人か見抜ける感覚だったりするのかもしれない。
もちろん、簡単な事ではないが、経験を重ねないといつまで経っても身につかないのは何事にも共通して言える事だと思う。
連なり
昼食中、このあとどこへ行くつもりだったのか尋ねられたので、津屋崎ブランチの名前を出すと引きの強さが更に際立つ。
「わたしそこの創設メンバーの一人です」
更には、フリースクールをお手伝いに来ていた大学生2人が
「僕達もお手伝いしてて、この後そこのイベントに参加するんです。一緒に行きますか?」
もはやこの旅でこういう驚きの展開ばかり続いているので感覚が麻痺してくる。
これってすごい事だよね?いや、偶然ではなくて必然?と自問自答。
そして、この日は代表の方もそこにいるらしく、会えるのはなかなかに珍しいことらしかった。
昼食後、お礼をして早速イベントに向かう。
この日行っていたイベントはオンラインで行う「意味の学校」というもので、テーマは「評価の哲学」だった。
哲学好きで、考える事が好きな僕にとってはドンピシャの企画。
急な参加にもかかわらず快く迎い入れてくれ、この日のイベントを大満喫した。
休憩中にどんな旅をしているかを訊かれたので話をしていると代表の方が大変面白がってくれ、津屋崎からイベントに参加しているみんなで一緒に夕飯に行きませんかと誘われた。
嬉しいお誘いや出会いってこんなに続くものですか?
この旅で少したりとも途切れることなく続いていく、奇跡の連続。
あまりに刺激的な流れ。「旅中毒」に陥る人がいるのもよくわかる。
そして、言うまでもなく、この日もとんでもなく楽しい夜を過ごし、雨をものともしない興奮状態の足取りで、走って叫びだしたくなるような気持ちを必死で抑えながら帰った。
雨上がり
翌日、津屋崎にも自分と同じような想いを持った人がいると知ったことで、福岡にとどまる理由もないように感じてきたので福岡を出る事に。
それに長崎に行く前に佐賀のおじいちゃんの家も見ておきたかったので、早めに行動するにこしたことは無い。
前日、津屋崎からの帰り道、愛媛の船の待合スペースで出会った佐賀のおじいちゃんに明日行っても大丈夫か確認の電話を入れていた。
出かけているかもしれないから、また近くに来たら電話をくれと言われた。
タイミングが悪ければそのまま佐賀を通り越して長崎に行けばいいので、どちらでも構わなかった。
ただ福岡を出る前にもう一つ行きたい場所があった。
それは祖母の家の徒歩10分圏内の近くにある絵本屋さんだ。
普通の活字の本だけではなく絵本も好きなんです。
開店時間すぐ位にお邪魔してじっくり絵本を選ぶ。
前に岡山のカフェで隣に座った人と絵本の話で意気投合し、オススメされていた絵本を発見して購入。
お会計をする際にいつからお店があるのか尋ねたのをきっかけに会話が弾む。美味しいコーヒーまで出していただき、腰を下ろしてゆっくりお話し。
店員さんの人の良さがとてもよく伝わるような、このお店の居心地の良さに気が付くと1時間近く滞在していた。
お店を出る前に連絡先を交換し、昨夜から続いていた雨が止んだばかりでちらちらと光るアスファルトの上を、キレキレのステップで駅へと向かった。
つづく
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