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扉は閉ざすより開くほうが難しい

 扉は閉ざすより開けるほうが難しい。誰の名言だったか、ネットで検索してみたが出てこなかった。よく思い返してみたら僕の考えた名言だった。今後僕が有名になったら僕と一緒にこの言葉も知れ渡るかもしれない。

 名言はそれを言い放った人物とセットでなければいけない。
 我輩の辞書に不可能という文字はないと国語学者の飯間浩明さんが言ったらまったく別の意味になってしまう。

 余談であるが、我輩の辞書に不可能という文字はないと言い放ったナポレオンは痔に悩まされていたらしい。
 ナポレオンは1815年6月18日、46歳の頃、ワーテルローの戦いに敗れ、セント・ヘレナ島に流されてその生涯を閉じたとされますが、ある記録によると、ワーテルローの戦いの2日ほど前にナポレオンは、血栓性の痔核に悩まされていたらしい。痔核て。えぐいな。
 一説によれば、その激しい痔の痛みのために鋭い指揮力が鈍ってしまったのだとか。痔核恐るべし。

 余談ついでに「痔核」をネット検索してみたところ、なんのことはない「いぼ痔」のことを「痔核」というらしい。排便の際のいきみによって直腸や肛門の内側が鬱血したり血管が切れたりして腫れ上がったもので、直腸や肛門の壁内にできるそうだ。
 痔核のうち、肛門の中にとどまっているものは内痔核、肛門外に出ているものは外痔核と呼ばれる。水分摂取量や食物繊維の摂取量が足りない、あるいはデスクワークの時間が長い、または重たいものを扱う職種に起こりやすいというから、ナポレオンがどれに該当するかといえば、戦時中にひどくなった点を鑑みると、水分や食物繊維が足りていなかったのかもしれない。

 さて。
 肛門は閉ざすより開けるほうが難しい。
 いや、違う。
 扉は閉ざすより開けるほうが難しい。

 何を書きたかったのかといえば、まさに書いたままであり、閉じるより開けるほうが難しいのだ。
 興味関心が移ろうままにその世界への扉を開いていくのには労力が伴うが、何に対しても関心を持たずに扉を閉じておけば楽である、という話。

 扉を閉じたままにしている大人のなんと多いことかと思う。
 閉じた扉のなかの世界で威張り散らしてる。それがカッコいいと思っているらしい。そうやって若者に「俺の生き様」を説いている。扉を閉じて楽してる大人が何を偉そうに。しょーもない。

 扉は開いていかないといけない。四十歳を過ぎた頃から殊にそう思うようになった。
 閉じている場合じゃないと思ったからだ。
 ここで扉を閉ざしても俺は何一つ面白くないと絶望したからだ。扉を閉ざして偉そうにしている人たちの姿を目の当たりにして心の底から恥ずかしいと日々感じているのもあるかもしれない。そういう意味では感謝している。あれほど反面教師という言葉の似合う人たちはいない。

 社会の常識だとか当たり前だとか、そういうものに縛られていたら閉ざされた扉を開くことはできない。開くことができずにフラストレーションを抱えている大人もたくさんいる。いつも怒っている。そういう人の怒りは周りに当たり散らかすだけの怒りだから面白くない。怒るなら矛先は上になければ面白くならない。

 上を向いて怒ろう。
 開ける扉は開こう。

 扉を開こうとしなければ、僕はナポレオンが痔に悩まされていたことも、いぼ痔のことを痔核ということも知らなかった。
 別にそんなこと、知らなくてもいいと思ったあなたに黄信号。その姿勢が人を扉のなかに閉じ込めるのだ。扉を開かなければお通じが悪くなる。それによってあなたの扉の前には痔核ができてしまうのだ。

 そういえば、閉ざされた扉のなかで偉そうに1ミリも面白くない話をしている大人はいぼ痔みたいだ。自分が痔核になっている自覚がない恥ずかしい大人だ。ああはならないよう、開ける扉は開いていこう。

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