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1人目の客になれなかった話

趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。

「伝説」なんて言葉を使っていいのはドラゴンクエストだけだと思っています。確かに美味しかったけど。「伝説のお店が復活する」なんてさすがに大袈裟なんじゃないかと思っていました。

学生時代、何回か食べに行ったその店は、葛野大路の決してアクセスのいい場所にはありませんでしたが、私の記憶では北白川の「東龍」というお店とともに「京都の美味いラーメン屋」の代名詞的存在でした。ニューミュージック研究会とは名ばかりのメタルサークルの先輩や、嵯峨野に住んでいたロックコミューン(こちらは私が入ってた音楽サークル)の先輩たちと食べに行ったのを覚えています。

惜しまれつつ2009年頃に閉店しましたが、今日四条河原町に復活オープンするまでの間にいつのまにか「伝説のラーメン屋」になっていました。復活オープンが近づくにつれ、私の周りのラーメンファンのあいだでも期待が高まっていくのを感じておりました。1人目の客になることを趣味にしているうえ、何も予定が他にないのであれば、これは挑戦せねばなるまいと思い、オープン1時間前に到着できるよう、四条烏丸を出発しました。

実は昨日のうちに下見はしておりました。四条河原町東側の歩道を北へ上る。リンガーハットの角を右折、リンガーハットの角を右折。それだけ覚えて帰りました。

四条河原町を北へ上る。
私と同じように北へと歩を進める人たち全員がリンガーハットを右折するのではないかと思え、幾分早足になりましたが、誰も曲がりませんでした。リンガーハットのRの文字。
少し母校のロゴに似ていなくもない。「20時からテイクアウトはじめました」と書かれた幟。右折。

駐車・駐輪禁止と書いてあるシャッターの前で若者がうずくまっています。酔っ払っているのでしょうか。それとも開店を待っているのでしょうか。しかし、後者だとして、店の前に並んでいないんだから、君のことは知らなかったことにして順番抜かしするからね!と思いながら、ちょうどそのシャッターの向かい側にあるお店のほうを眺めてみると、すでに3人並んでおりました。

3人にあって私になかったものが勝敗を分けたのだと思います。彼らは私よりも「伝説」を信じていたにちがいない。

6月22日、午前11時30分。
四条河原町上ル、リンガーハット角東入ルにオープンするラーメン杉千代の1人目の客にはなれませんでした。

#令和3年6月22日 #日記 #note日記
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