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短編小説『催眠術の出番』
著者:ジドラーステェ・ビーチェ
翻訳:吉林佳史(専門家)
太郎ちゃんがコロナで国民の民度が高いって言うてたけど、わいはむしろ逆やと思う。いま、我が国民の民度はかなり底辺を這っとるさかい、あいつらがアホなうちにやれることはやってしまうんが得策よな。野党は批判ばっかりや言うて、わいらが何をしたところであいつらわいらの味方やさかいの。なんや言うて、わいらの味方しといた方があいつらにとっても都合がええさかい。しょうみな話、わいらが味方につけとかなあかんのは、わいらの味方してくれとるアホどもやねん。貧乏人のほうが頭ええ奴いっぱいおるけど、あいつらのことは気にせんでもどうせ、わいらの味方のアホどもが潰してくれよるさかい、わいらもなるべく貧乏人から順番に苦しくなる施策をとらなあかんやろ。
とりあえずインボイスはうまいこといったさかい、次は交通費の課税や。これも、もう既にアホどもがわいらの味方してうまいことええ流れを作ってくれとる。税金は貧乏人から搾り取るに限る。あいつらはわいらに票を入れへんし、ていうか、そもそも投票に行かへんし、わいらにとっての国民は票田いう意味やさかい。ほんまはタバコ税もあと三千円くらい上乗せしたいんやけど先生方も皆さんよう吸わはりますさかい、そこは抑えとこ。せやし、嗜好品に課税してもしゃあないねん、相手は貧乏人なんやさかい。タバコは別やで、あいつらタバコだけは吸いよるさかい。あとは酒。第三のビールに課税してビールの倍くらいの値段にしてしもたれ。あいつら貧乏根性がしみついとるさかい、ビールの値段なんか確認しよらへん。一缶五百円程度なら買いよるで。あとは「せいこう税」な。貧乏人が成り上がったときにたっぷり搾り取れるし、まあ、これはダブルミーニングでもあるんやけど、ぐへへへ。後は睡眠税やけどこれは国民(票田)をどないして誘導していくかがポイントや。催眠術の出番やな。
蠱惑暇(こわくいとま)