エッセイ『人の感性に染まる』

　ミセスグリーンアップルの「私は最強」という曲、ご存知の方も多いと思います。劇場版ワンピースでウタが歌ってましたよね。あれは作詞作曲がミセスの大森さんでして、ミセスがセルフカバーしているんですが、驚くことにウタと同じキーで歌ってるらしい。大サビの「私は最強〜🎵」の部分は何回聴いても気持ちよく、この気持ちよさは布施明の「君は薔薇より美しい」以来なんじゃないかと思っています。

　息子が二人いて時に彼らの需要に合わせなければならなかったり、職場においても自分の感性よりも一緒にお仕事をするパーソナリティの方の感性を優先させなければならない場合もあったり、齢四十三にして、なかなか己の思い通りに生きることができない私ですが、そのおかげでこれまで触れる機会のなかった世界に触れることができて嬉しい。ミセスグリーンアップルも職場の先輩に薦められて聴いてよかったから観に行ってみたライブがたまらなく最強だったし、最近では、我が子がYOASOBIにハマっており、そのおかげで私もYOASOBIを聴くようになりました。

　こんな風にして人の感性に染まることで世界は広がるんだと思う。無限に広がるこの世界ですから、あまりに拡げ過ぎてしまうとキャパシティを大きくはみ出してしまい、あれもこれもと手足をバタバタさせるだけで溺れ死んでしまいかねませんが、そのことを恐れるあまり、自ら世界の拡がりを拒んでしまうと、あらゆる新しい刺激を自らの稚拙な経験値に基づくたいしたことない感性でもって「つまらないもの」と断じてしまいがちになる。

　私の周りにも「YOASOBIなんてつまらない音楽オレは聴かない」などとおっしゃる大人がいらっしゃるのですが、それはYOASOBIがつまらないのではなくて、世界の拡がりに臆病になってしまったあなたの感性がつまらなくなってしまっただけなんじゃないかと思うんですが、どんなもんでしょうか。

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