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東京日記2 舞浜

 可能な限り吊り革は両手でつかむ。痴漢の冤罪ほど怖いものはない。根が臆病であるがゆえ、心配の種は取り除いておきたい。そのくせ不用意な発言により己の立場を危うくせしめたり、誤解を招くような投稿をしたり、欲望に抗うことができなかったり、本能に理性が追いつかなくなる。齢を重ねるごとにそのようなことは少なくなってきたが、今より若い頃にはいけないこともたくさんあったと思う。芸能人や政治家が過去の発言や行いについて非難批判されるのを見るにつけ、「昔のことはええないか」と擁護したくなるのは自身の保身ゆえでもある。
 まもなく舞浜というところで海側を眺めてみるとテレビやネットで観たことのある西洋の宮殿風建築物が見える。晴れ渡る爽やかな秋空に映えている。こんなに駅直結のところに夢の国があるのかと驚く。通り過ぎるだけではもったいないと思ったら降車の波に抗う気もなくなり流れるままに降りてしまった。京葉線は蘇我行きであり、途中で武蔵野線に乗り換えなければ西船橋へは行けないため、どうせどこかで一旦下車はしなければならなかった。
 いったんホームで夢の国の外観を撮り、降車の波には置いていかれた。どのみち、改札の外には出られない。窓枠がミッキーマウスの顔の形になっている車体がピンクの列車が走っているのが見える。トイレだけ済ませようとエスカレーターを降りる。トイレの入口には、個室内で仮装用の変装や化粧はするんじゃないよ、と注意書きがなされていた。
 京葉線ばかりやってくる。武蔵野線が全然来ない。降車第三波を見送ったところで武蔵野線が到着した。夢の国をなんの感慨もなく通り過ぎる大人たちも別に目が死んでいるわけではない。それぞれに生きる目的があるに違いない。それは私のように地方紙を買うためだけに遠出をするというようなつまらなさであったとしても、夢の国なんぞ気にも留めずにいられる目的が、あるに違いないのだ。

続く
※続かないかもしれない

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