閉店を嘆くなら開店を祝え
閉店のニュースがあると「学生時代よく通ってました。悲しい」とか、「最近行ってなかったけどいい店やったよな」といった惜しむ声が出てくるのですが、どうして閉店するかといえば「みんな最近行ってない」からなんですよね。
四条大宮を歩いておりますと、マツモトキヨシの看板が光り輝いており、あそこは数年前までブックファーストであったことを思い出しておりました。掛布さんなら「ブックフォアスト」と言うかもしれないとも思っておりました。
当たり前にあった書店もどんどんなくなっております。マツモトキヨシはまったく悪くありませんが、揺れて揺れて今心が何も信じられないまま辿り着いた大宮駅のうえにブックファーストがある景色が私は好きでした。
書店が近くにある駅が好きなんです。
阪急烏丸駅の近くには「くまざわ書店」と「大垣書店」があります。大垣書店はスイナ室町に本店があるのですが、かつては烏丸通り沿い、ラクエの北側、マクドナルドの2階にも店舗がありました。妙にオシャレな今の本店よりもそっちの大垣書店のほうが好きだったのですが、なくなってしまいました。
河原町方面へ歩いていくと途中にあった「ジュンク堂」も今はもうありません。大学入学を機に京都に来て最初にぶったまげたのがあのどでかい本屋さんでした。こんなにでっかい書店があるなんて京都はなんて大都市でなんて豊かな文化のあるアカデミックな街なのだと思いましたが、そのジュンク堂もコロナの前にはなくなっていました。
私は書店のある町が好きです。
もうこれ以上、なくなってほしくありませんから、じゃあどうすればよいかといえば、懐事情の許す限り、書店で本を買うことです。ずっとそこにあってほしいお店がずっとそこにあり続けるために私のやれる最小限がそれです。最小限かつ最大限です。書店に限らず、こんなお店のある町が好きだ、と思わせてくれるお店で買い物したり飲み食いしたりしないといけません。
閉店が決まってから「惜しい店をなくした」と感慨深げに投稿するくらいなら、その惜しいお店がなくなる前にやれることがあるはずです。
閉店を嘆くなら開店を祝え。
チャゲアスの歌で似たようなタイトルの歌があったと思います。
そんな理由もあり、私はオープンしたお店の1人目の客になるのを趣味にしております。
そんな私の趣味についてまとめた著書『1人目の客』や1人目の客Tシャツ、京都情報発信ZINE「京都のき」はウェブショップ「暇書房」にてお買い求めいただけます。
販売する側、あるいはステージにあがる人間として大事なのは、「この人の存在する世界が好き」と思ってもらえることだと思います。そのことについて正面から向き合いながらあらゆることに勤しむ所存でございます。
今後とも、わくいまこと(演者としての私)ならびに、こわくいとま(書く人としての私)をどうぞよろしくお願いします。