エッセイ『大人が意見を変えることは』

　兵庫県が暑くて熱い。暑いのほうは気温のこと。熱中症警戒アラートが発表される日もしばしば。そして熱いは高校野球。ＮＨＫの中継では画面の左に「熱中症警戒アラート　大阪　兵庫　京都　和歌山」などと、テロップが表示される。
　熱中症予防情報サイトによりますと「熱中症警戒アラート」とは、特に暑くなると予測された日の当日や前日に環境省と気象庁が、いつも以上に積極的に熱中症予防に努めましょうね、と注意を呼びかける情報です。予防方法としては「どうしても急ぐ用事などがある場合以外は、外出を控える」などがあります。
　熱中症警戒アラートが発表されているということは、どうしても急ぐ用事などがある場合以外は、外出を控えましょうね、という合図なのに、そんなお知らせとともに炎天下の高校野球を中継することに多くの人が矛盾を感じているようです。

　元高校球児の大人たちの意見としては「甲子園は特別」「球児はみんな甲子園を目指してる」など、まあいろいろありますが、とにかく「いま頑張ってる球児たちの夢や目標のため」に甲子園大会は現状維持するべきであり、甲子園球場を京セラドームなどドーム球場に移行したり、あるいは甲子園球場を屋根付きにするなどという案は一蹴されてしまいます。あの堅固さは劉表統治下、孫堅たちを苦しめた襄陽城に匹敵するでしょう。あるいは張遼が守る合肥。

　しかし、私はなんとなく、あと何年かすれば当の球児たちから「別に俺たち甲子園じゃなくてもいいです」っていう声が上がるんじゃないかと思う。令和の球児はその程度にはドライなんじゃないかしら。そうなった時、球児たちの思いを代弁していたはずの大人の皆さんはどんな理屈をつけて現状維持をアピールするんでしよう。それとも子どもたちがそういうなら、と納得するんでしょうか。大人が意見を変えることってそんなにカッコ悪いことではないってことをもっと大人は知るべきだ。

蠱惑暇（こわくいとま）

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