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危ないおっさん
今日は三条会商店街でハロウィンのイベントが開催されます。七月の七夕夜市ほどではありませんが、この日も例年、三条会商店街がとてつもない人に埋め尽くされます。どこから湧いて出た?と思います。外国人が多いわけでもなく、おそらく基本的には近隣の住民が集っているとみられるのですが、そうだとするならさすが京都市中心部。底力をみる思いです。昨年はおそらく名探偵コナンのコスプレなんでしょうけど遠目には銀シャリのツッコミにしか見えないおじさんがいました。
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界隈の少年少女たちにとって、このハロウィンイベントは一大イベントのようで、うちの中学二年生も数日前から何やら仮装の準備をしておりました。私の冠婚葬祭用の黒いジャケットに黒いネクタイを着用し、それだけ見たらどう考えても葬式なんですが、その出立ちで段ボール箱を被るという扮装をするつもりらしいから、「おっ!箱男か!?」と尋ねてみたのですが無視されました。
どうやら友人何人かと一緒に同じ仮装で繰り出すらしい。段ボール箱にはもちろん目の部分に穴を開けているとはいえ、視界が著しく遮られるし、普段より顔がでかくなっているわけですから、あの尋常じゃない人混みのなか、すれ違う人たちに段ボールがぶつかっていちゃもんをつけられやしないかと不安になります。昔みたいなどう見てもヤンキーな若者はいないかもしれませんが、残念ながら、いまなお、ヤンキーな若者を気取っているおっさんはいますし、そういうおっさんはお酒を呑んで酔っ払っている可能性があり、そうなるとものすごくタチが悪いので、とにかく、そういう危険人物と遭遇しないことを祈るばかりです。
私が子供の頃は平素から「どこかおかしいおっさん」が存在しており、良識ある大人たちが「あの人とは目を合わしてはいけません」などと注意をしていたものですが、いまは日常において、「どこかおかしいおっさん」を見る機会が減りましたから、いまの子供は免疫がありません。突如として祭りにあらわれるヤバい大人には対処できません。
こういうことではよくないから、やはり令和の現代にも普段から「どこかおかしいおっさん」が湧いていないといけないのです。だから私のような人間がそうならないといけない。私以外にも私界隈にはそういう素質のあるおっさんがたくさんいます。
シャンプーハットの小出水さんは幼い頃、近所の公園に遊びにいったら、子供たちから「ステテコハッチ」と呼ばれている怪しいおっさんがいることに気付きました。ステテコを履いて辺りを徘徊している危ないおっさんだったので、子供たちが「ステテコハッチ」と呼び、近づかないようにしていたそうなのですが、小出水さんはその日まで、「ステテコハッチ」の名前は知っていても、見たことはなかったので興味本位で近づいていったらしい。「あかんで!近づいたら仲間にされるで!」などと友達に注意されながらも「僕は大丈夫!」と言ってステテコハッチに近づいていった小出水さん。どんどん近づいていって気づいたのですが、「ステテコハッチ」は小出水さんの実の父親だったそうです。
こういう危ないおっさんに私はじめ、私界隈のおっさんたちが率先してならないといけない。そうすることで、大人の恐ろしさ、世の中の不条理さ、平穏な暮らしの尊さなどを子供ながらに実感できるし、いざ、祭りなどの最中に急にあらわれるおかしいおっさんにも冷静に対処できるわけです。
さあ、皆さん、私と一緒に危ないおっさんになりましょう。
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