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腕時計

 近頃、スマートフォンでやらなくてもできることはなるべくスマートフォンじゃないものでやろうと思っていて、近いうちに腕時計を買うと決めているのですが、さきほど京都駅近くのヨドバシカメラに入っているヴィレッジバンガードに腕時計が並んでいたので眺めておりますと、そういえば、大学入学前、親に腕時計を買ってもらったっけな、と思い出しました。

 たぶん、もうそのお店も無いんじゃないかと思いますが、JR長浜駅の近くにある時計屋さんで確か1万円もしないくらいの腕時計を買ってもらった。SEIKOか何かの腕時計。買ってもらい、左腕にそれをはめたとき、大人になったような気がしたことを覚えています。
 さっき調べてみたら、腕時計は利き腕の逆の腕にはめるのが一般的らしいのですが、左利きの私は左腕にはめたと記憶しています。右利きより左利きは圧倒的に少ないですから、右利きの人のはめ方に倣ったのでしょう。

 いまひとつ、腕にフィットせず、なんというか、左腕でぐらぐらする腕時計は、そのまま子供と大人の間を揺れる当時の私そのものだったように思うし、そうやって自分の身体の一部に余計な違和感があることが、大人であるということのような気がしたから、家から外に一歩も出ない日にも左腕に腕時計をはめていました。

 やがて大学に入学し、一人暮らしをはじめる頃には、腕時計のぐらぐらが鬱陶しくなり、たぶん調整すればそのぐらぐらはなくなり、うまく腕にフィットしたと思うのですが、腕時計を調整することをせず、私は腕時計をはめることをやめました。大人と子供の間をぐらぐらしていたはずなのに、一人暮らしを始めてタガの外れた私は腕時計も外して子供に逆戻りしてしまった。

 そんな私が今、あさって磔磔にて開催する涌井大宴会の小道具を買いにきたヴィレッジバンガードで腕時計の並ぶケースを眺め、ぐらぐらしていたあの頃のことを思い出し、感慨にふけっている。

 あれから大人になれたかといえば、相変わらず人から「しょーもな」と笑われるようなことばかりやっており、それはまるで子供のようでありながら、子供の頃の純粋な気持ちは失われてしまった気もするし、それでも薄汚れた大人にはならぬよう、抗いながら、しかし、これまで生きてきたなかで、確かに自分も汚い大人だったこともあり、そのことに対する贖罪の思いもありながら、なんとかこうして生きているのです。

 「しょーもな」と笑われるタイプのやつではなく、本当にしょーもない人間だと思いますけど、しょーもない人間なりに面白い場所を作り上げます。

2月10日(月)涌井大宴会in磔磔
第1部 18時30分スタート
●うまいこと言いたがるおっさん撲滅委員会
●ラジオディレクターの男
●片山尚志の1曲
●道路交通情報の女

第2部 20時スタート
●あらゆるハラスメント撲滅委員会
●ライブハウスの男
●片山尚志の1曲
●舞鶴の女

第1部/第2部 各2000円
通し 3500円(500円お得🎵)

皆様のお越しをお待ちしております!

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#涌井大宴会 #腕時計

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