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エッセイ『ワイヤレスイヤホンに罪はない』

 ワイヤレスイヤホンが本当に嫌いで。いや、ワイヤレスイヤホンには罪はない。俺だって洗い物するとき、洗濯物を干すときなんかには使っている。ワイヤレスイヤホンが嫌いなのではなくワイヤレスイヤホンを使ってる人の中にすごく嫌な人がいるという話。

 まず、これはワイヤレスに限らずなんですが、イヤホンあるいはヘッドホンしている人に何か用事があって声を掛けるでしょう。そうすると、ものすごく煩雑そうに面倒くさそうに大仰な態度でイヤホンを取り外し「この私がイヤホンで気持ちよく音楽(じゃないかもしれないが)聴いてるのを邪魔してまで優先させたい君の用事はさぞかし重大なことなんでしょうね」とばかりにこちらの用事を品定めしてくる視線に心底うんざりするのです。私はあの態度が本当に嫌いなので自分がイヤホンをしていて声を掛けられた時には、できる限り愛想よくしようと決めています。相手が私みたいな発想をする人だと嫌がられてしまうから。と、思考がそこに至ってはじめて果たして鬱陶しいのはあっちなのかこっちなのかとなるわけですが。

 そんなことより何よりやっぱり本当に奇跡的に嫌いなのはワイヤレスイヤホンして移動している人たちです。本人たちは「何がいけないのだ」とお怒りになられるかもしれませんが、そうやってお怒りになられること自体が恐ろしいのです。ワイヤレスイヤホンをして移動しておきながら「歩きスマホは危ないからやめてほしい」などと憤っておられるのが恐ろしくてならないのです。耳が塞がっているのは、たぶん、目がスマホに向いているのとそう変わらないくらい危険なのです。また、危険であることを伝えようにもそのシグナルをキャッチしにくくなっているのも難儀なのです。そのうえ、自分は危ないことはしていないという意識が強いため、身に危険が及んだ際に相手に責任を押し付けがちになるのです。

 ワイヤレスイヤホンに罪はないのですが。

蠱惑暇(こわくいとま)

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