七夕夜市混沌
いつ降り出すか知れない不穏な空は反抗期みたいだなと思う。わかっているのに本人は傘を持つなんていうまどるっこしいことはしたくないのが反抗期というもので、かといって、いざ雨が降り出すと途端に不機嫌のスイッチが入ってしまう。衝動を抑えることができないのが反抗期だ。いつ降り出すか知らないあの空の不穏さはそれに似ている。
そんな不穏な空の下、365日晴れの街としておなじみ、三条会商店街は今日、七夕夜市が開かれておりました。東方神起でも来てるんかってくらいのものすごい人が商店街にひしめいており、なかにはきっと政治的に左の人もいれば右の人もいるでしょう。都知事選、あなたなら誰に投票しますか?とアンケートすれば同じ商店街の同じイベントを楽しんでいる人たちでも意見は割れるはず。
本来、意見が割れ、その意見を発表し合えるのは好ましいことであり、SNSでは「私は蓮舫にいれました」「石丸一択」「ひまそらあかねやろ」あるいは「ゆりこゆりこゆりこ」とチョコレートディスコみたいに連呼している人もいますけど、それだけ見れば民主主義っていいよなって思えるのですが後がよくない。けっこう皆さん、自分が支持する人以外のことを貶す傾向があり、それは要らんのになーって思います。
誰に投票しようが人格を否定される筋合いのものではないわけで、同じ人を支持していても気が合わない人もいるし、違う人を支持していてもお互い認め合えるおもろい友人もいる。
商店街にはいろんな人がいて、みんな政治に望むことは大なり小なり異なるのは間違いないけど極左から極右までいろんな人がサラダボウルのドレッシングみたいにぐちゃぐちゃに混ざり合って汗が溶け合ってなんか場所によっては生ごみが腐ったみたいな匂いがしたのもたぶんあれは人々が生きている証だったんだと思うし、夜の営みみたいな匂いもしたような気がしたし、中学生の男の群れはめちゃくちゃ大きい声で女の子の名前を呼んでいて私は彼女の名前を覚えてしまったし、あんなに混雑している商店街を車で横切ろうとしたドライバーもいたし、カップルはもう明らかにおまえたちこのあと・・・っていう雰囲気だったし、保育園が一緒だったお母さんには知らん顔されるし、この混沌のなかで同じ空気を吸っている人たちの抱える諸事情の諸の部分の多様さたるや。それも全て受け入れてくれている商店街の頼もしさたるや。他者を排除せず、その場にあるものすべてをぐちゃぐちゃにかき混ぜてしまえば意外と気持ちがいいもので、今日の七夕夜市なんて、いってみれば祭りみたいなものやったわけですが、祭りというのはそういうところがあるものでして、ああ、そういえば政治だって「まつりごと」って言うではないか。政治ってそういうことなんでないの?
それにしても、ものすごい人だかりだったので雰囲気だけ味わいつつフレスコの出店でたこ焼きとフライドチキンと唐揚げを買い、早めに脱出。ほんまは呑むつもりなんてなかったのに気づけば缶ビールと缶チューハイを買うていました。そのくらい人々をアホにしてしまえるくらいの気持ちのええ「まつりごと」が好きなんですけど、明日の都知事選はどんなもんなんでしょう。行く末が反抗期の中二みたいな空よりも不穏です。
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