1人目の客になれた話 京福西院駅近く編
趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。コロナ禍前から続けているこの趣味についてまとめた本を今年2月に発売いたしました。暇書房というウェブショップにてお買い求めいただけます。
生活圏内で無理なく続けておりますので自然、京都市右京区西院界隈のお店が多くなります。鰻屋、バー、焼き鳥屋、居酒屋、コンビニ、タピオカ店にお蕎麦屋さん、西院にオープンしたいろんなお店の1人目の客になりました。1人目の客になることでお店への愛着が生まれます。一つのお店に愛着が生まれ、その愛着が重なり、西院というエリア全体への愛着へ生まれ変わりました。今後、京都市内あらゆるエリアで1人目の客になればその愛着は市内全体へ広がり、京都府内→関西圏→西日本→日本全国→アジア→北半球→地球という風に愛着が広がっていけばその分だけ地球は平和になっていくのではないか。
そうであるなら、全世界の人々が等しくオープンしたお店の1人目の客になることを目指し、私と同じように愛着を広めていけば、その分、地球はさらに平和になっていくのではないか。
しかし、みんながみんな1人目の客になることを目指しても1人目の客になれるのは一店舗につき1人だけなのです。そうであるなら、全世界でみんなが1人目の客になることを目指した場合、全世界で1人目の客になるための争いごとが起こるかもしれず、そうなってしまうと地球は平和から遠ざかってしまいます。むむむ、なかなか一筋縄ではいかない世界に私たちは生きている。机上の空論はどうでもいいから実践をすることにする。
二日ほど前に友人から「9月7日、西院にバーがオープンする」と聞きました。京福「西院(さい)駅」の踏切のすぐ横、四条通り沿いのかつてコーヒーショップのあった場所です。
その場所ならわかるけど、何時にオープンするかがわかりません。とりあえず店の前まで行ってみるか。そうして一昨日だったか、店の前へ確認しにいってみたところ、何時オープンかは書いていなかったのですが、ただ、新店オープンのお知らせとともにお店の詳細について書かれたサイトへ誘導するQRコードがあったのでそこからサイトへ行ってみると、営業時間のところに「10:00〜」と書いてあり、そうか、バーやし遅い時間からの営業なんやな、と思っていたら、よく見ると「10:00〜22:00」と書いてある。午前10時やないか!
土曜の朝は普段は職場で作業をしていますから、午前10時オープンのお店の1人目の客になるには、普段土曜の朝にしている作業を前倒しで終わっておかなければいけません。趣味は仕事を投げ出してまで打ち込むものではありません。仕事は仕事、趣味は趣味。この趣味によって誰にも迷惑をかけないでおくことが重要です。昨日のうちにある程度作業を進めておき、今朝はいつもより早起きして職場へ向かい、最後の一仕事を終えてから午前9時20分をめどにお店の前へ到着できるよう、準備を整えました。
朝の5時半頃にお店の前を通ったら、お店の入口の屋根のあたりを脚立に乗ったお兄さんがペンキで塗っておられました。
「おはようございます、今日オープンですよね」
「はい、10時です」
「おめでとうございます。あとで来ますんで」
「ありがとうございます」
この他愛のない会話から愛着が生まれるのです。「早めに来てオープンするのを待ちますねー!」と伝えておくことで早くから並ぶことをあやしまれないための布石を打つことも忘れない。なかなかぬかりのない男になったものです。
9時20分を少し過ぎたので焦りながら阪急西院駅の地上へ続く階段を駆け上がる。概ね開店40分前に到着すれば1人目の客になれることを私は経験上、知っている。裏を返せば40分前に着いていなければ1人目の客になれないことも多いということです。
急ぎ地上へ出て踏切を渡ったのが9時25分くらい。入口の扉には「営業中」の札がかかっておりました。これ、たまにあるやつやん。10時オープン言うてるのに早めに客が来たから早めにオープンしてしまうやつ!私もその恩恵によりオープン前の時間に入店したことが何度もあるし、逆にそれゆえに1人目の客になれなかったこともある。久しぶりにそのパターンか!と思いながらお店に近づいてみると店内はまだ暗い。いや、しかしバーならちょっと照明が暗いのもそういうものなのかもしれない。中を覗いてみるとカウンターに今朝ペンキを塗ってたのとは違う男性がおられたので、「開いてます?」と尋ねると「10時からです」とおっしゃるので「営業中」の札が間違いであることを知る。
あとは10時のオープンまでお店の前で待っておけば1人目の客になれます。中から今朝ペンキを塗っていた人でも、今カウンターに立っていた人でもない男性が出てきて「お越しいただきありがとうございます」と私に名刺をくれました。
令和6年9月7日、京福西院(さい)駅近くにオープンした「ちょっと一杯酒場ぜろ西院店」の1人目の客は私です。あ、バーじゃなくて酒場なのか。また西院への愛着が少し大きくなりました。この地球への愛着も。
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