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短編小説『ひでりっこちゃん』

 電気代が気になるかもしれませんが命がいちばん大事です。室内であっても熱中症にはかかります。エアコンをうまく使って猛暑を乗り切りましょう。

 ラジオのパーソナリティがそんなことを呼びかけていて腹立たしい。エアコンを使ってしまったら電気代は払えない。電気代が払えたとしても今度は家賃が払えなくなる。そうしたら俺は家から追い出され、橋の下で暮らすことになる。コミュニケーションの上手くない俺がいきなり橋の下へ行ったところで、そこには先客がいるわけだから、ご挨拶をしなければなるまい。一人ではないかもしれない。集団で暮らしていて一つの社会が形成され、俺はどこまでも余所者としてイケズされるかもしれない。そんな暮らしは嫌だから橋の下を転々とするがどの橋の下も状況は同じ。そうこうしているうちに汗まみれの衣服からは異臭が漂い、職場からもつまみ出され、コンビニに入ることもできなくなる。
 だいたい熱中症に注意せよ、などと言ってエアコンを推奨するなど、どこの電機メイカーの回し者なのか。炎天下といっても、たかだか三十五度程度、体温なら低いくらいなのに大袈裟に言いすぎではないのか。
 昼間から外にも出ず、エアコンの効いた部屋でだらだらしているから暑さへの免疫がなくなり、三十五度程度で熱中症になってしまうのだ。強靭な身体を作るには、まず日中、太陽光を浴びながら散歩をすること。そうすると身体中から汗が噴き出る。この汗は体内に不必要なものを放出してくれる。身体の中の余計なとのを外に逃すには日中の散歩がちょうどよく、これを続けることが、ひいては熱中症予防に繋がるのである。

 と言っていた主人が昨日他界しました。主人のようなことにならないためにもラジオでは引き続き、熱中症対策を呼びかけてください。

ラジオネーム    ひでりっこちゃん
リクエストはプリンセスプリンセスの世界でいちばん熱い夏をお願いします。

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