1人目に入店したけど1人目に注文できなかった話
趣味はオープンしたお店の1人目の客になることです。祇園祭は長刀鉾で本日から粽の授与がはじまります。昨晩、1人目の客になってやろうかと少し考えたのですが、まだ日が昇らないうちから並ばなければならなさそうだったのであきらめました。そこまでして並ぶほど私も暇ではないのです。聞くところによると、朝9時30分頃の段階でものすごい行列ができており、そのうえ、「並んでる人全員に粽が授与できるかわからない」ということらしい。粽を手に入れられなかった人にさっそく訪れる不利益!
長刀鉾のことは置いておいて。
思いのほか本職の作業が長引き、午前10時過ぎにあわてて職場を退出し、午前11時にオープンする店へ向かう。今日は赤い1人目の客Tシャツを着ているのですが、職場の先輩に「さすがに皺寄りすぎとちがうか」と指摘されてしまう。確かにしわくちゃになっており、これが孫と話すおばあちゃんの笑顔なら微笑ましいのですが、私にとっては一張羅ですから、ちゃんと手入れしていなかったことを悔やむ。
5月に明石家電視台に出演して以来、町中でこのTシャツを着ていたら、声をかけられるんじゃないかと少しばかり期待するのですが、今日は阪急電車で隣になったご婦人二人組に凝視されなだけで誰にも声をかけられませんでした。
阪急京都河原町駅を下車したのが午前10時15分を過ぎていました。40分前には到着しておかないと1人目の客になれない可能性が高まります。私はファミコンのBボタンを押されたみたいに早歩きして河原町を北上します。
歩道のアーケードには提灯が吊るされており、この界隈も祇園祭仕様になっていることを確認しましたが、四条烏丸のあたりほど祭りの雰囲気はありません。
目当ての京都BALに到着。文学界隈では梶井基次郎の檸檬の舞台になったことでも有名な京都BALです。その昔、ひそかに恋心を抱いていた女性がここの地下で働いておりました。
BALの入口には祇園祭のそれとは違うでっかい提灯が吊るされており、激しい自己主張を感じます。私もこのくらいもっとアグレッシブに自己主張しなければならないのかもしれない。
まだ入口は鎖で閉ざされており、誰も並んでいません。どうやらまだ大丈夫そうなので、木屋町の公衆トイレへ用を足しにいく。烏丸駅で阪急に乗った頃からずっと我慢しておりました。1人目の客になり、やがて店を出るまで堪えられるかどうか、というところだったのでおもいきって賭けに出て、数十秒で用を足し、確かな放出感に脳内ではユーリズミックスのゼアマストビーアンエンジェルが流れました。私の放出した小便も流れていきました。
ダッシュでBALへ戻ると幸い誰も並んでおらず、鎖も外されておりましたので、息を整えてからこの文章を打ち込んでおりますと、横から女性に声をかけられ、おー、ついに今日も声かけられたやん、やるやん俺、と思い顔を上げるとそれは職場でものすごいお世話になっている大好きなKさんでありました。別に名前出してもいいと思うけど伏せておきます。開店待ちしている私を撮影し、颯爽と去りゆく背中がかっこよかった。
その後もしばらくこれを書きながらBALが開くのを待っておりますと、親子連れが私の待機する入口の隣の入口に立ち止まりました。
そういえばBALには私とこの親子連れの待つ中央の入口のほかに北にも入口がある。私が1人目の客になりたい店は1階にあるのですが、1階のどこにあるかはわかりません。BALの入口が開いた途端、ダッシュで店内を探しているうちにこの親子連れに抜かされてしまうかもしれません。Kさんに写真を撮ってもらい、すっかり舞い上がっていた私は俄然焦ってきました。もしかすると北の入口から入るほうが早いかもしれない。いまのところ、まだこの親子連れしか並んでいないし、ここはいったん、とりあえず、北入口の様子を見てこようとBダッシュでそちらへ向かう。ちなみにこの「B」は「BAL」の「B」です。
北入口に着くと、なんとすぐそこに目当ての新店がありました。今日の私は「持っている」。全盛期の斎藤佑樹をしのぐかもしれない。入口で開店準備をしている女性に「ここで待っててもよいですか」と聞くと、「ありがとうございます、風、そちらに向けておきましょうか」と全能の神みたいなことをおっしゃったのですが、よく見てみたらその方の側に扇風機が置いてあり、それをこちらに向けてくださいました。実に涼しい。ここまで急いだ分の汗が消えていく気がする。
11時、自動扉が開く。入ってすぐが目当ての店の入口です。暖簾をくぐり、晴れて無事1人目の客になったのですが、レジで注文しようとしたら「お客様、テイクアウトですか?店内でお召し上がりですか」と尋ねられたので「店内です」と答えると「でしたらいったんお席に着かれてからご注文なさってください」ということでしたので、そういうことでしたら、と奥の席に着席し、鞄を置いて改めてレジへ向かうと、レジでは既に2人目に入店した女性の方が注文をしておりました。入店したのは私が1人目ですが、注文を先にされてしまい、最後の最後に捲られた気がしました。なんたること!!
抹茶ラテを注文し、支払いを済ませ、座席に着席すると店員さんが「受付番号NO.2」の札を持ってきてくださいました。オーマイガ。お店的には私は2人目の客ではないか。写真を撮ってくださいと言える雰囲気でもなかったので自撮りしました。
令和6年7月13日午前11時、京都BAL1階にオープンしたKOTOSHINA茶屋京都店に1人目に入店したのは私です。注文したのは2人目になりましたが、繰り返し書きます。1人目に入店したのは私です。
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