エッセイみたいなスムージー

人生にはいろんな場面がある。
全てを飲み込んで耐える場面・・・。
全てを注ぎ込んで勝負をかける時・・・。
全てを賭けて戦う時・・・。
全てを投げ出して逃げる時・・・。
人間には元々そういった場面を読む能力が大なり小なり備わっているのだと思う。
だから本能のままに耐え、勝負をかけ、闘い、逃げればいいのだと思う。
きっと頭で考えてからでは遅い場合もあるだろう。
しかし、怪異に遭遇した時、人は逃げるという選択をする場合が多い。
別に逃げるという選択を否定している訳ではない。
私だってそうだ。
以前は逃げるという選択しかしてこなかった。
いや、本能では分かっていたのかもしれない。
そもそもうちの娘などは深夜にリビングで1人でゲームをしていた際、突然隣の和室の引き戸が開いたがそのまま気にせずゲームを続け、挙句の果てに和室の中に老婆が現れてようやく重い腰を上げて
「ねぇ、お父さん!隣の部屋に知らないお婆さんがいるんだけど? 気が散るから追い払ってくれる?」
と落ち着いて言ってくる猛者だ。
そんなのを見てしまうと、俺もそうなりたいとは思ったものだ。
しかし、実際に遭遇するとそれがどうしても出来なかった。
回りの信頼できる人達からどれだけ説明されてもそんな事は無理だと勝手に諦めていた。
悲しい事に体が反応し逃げ出してしまう。
しかし、ある時冷静になって気が付いた。
怪異から逃げてもいつも追いつかれてるという事を!
そして追いつかれて感じるのは、いつも酷い疲労感と虚しい後悔だった。
そんな気持ちでAさん達に助けられるのは本当に情けなく恥ずかしかった。
そもそも怪異は歩いたり走ったりして追いかけてくるのではない。
いや、そういうタイプもいるのかもしれないが私的には今までそんな奴を見た事は無い。
浮かんだまま滑って来るか、もしくは瞬間移動的に先回りされる。
走って来ているかと思えば、足がそもそも地に着いてはいなかったり。
つまりあいつらはどんな動きも出来るんだと思っている。
そして逃げている相手が最も怖がりそうな方法を選んでそれを実践してくる。
結論から言えば、どうあがいても逃げきれないのだ。
だから気が付いた。
逃げきれないのが決まっているのなら逃げるだけ無駄じゃないか?と。
だから私は逃げるのを止めた。
まあ実際には強制的に逃げられなくなったのだが・・・。
咄嗟に逃げようとした時、一緒にいた霊能者に首根っこを掴まれてこう言われた。
・・・いつまで逃げ続けるんですか?
・・・それなら私が引導を渡してあげましょうか?
・・・逃げても何も解決しませんね。
・・・恐怖だけが増していくだけ・・・。
・・・そして恐怖は全てを悪い方向に導いてしまう。
・・・だったら振り返ってみませんか?
・・・やってみたら案外怖さは消えるものですよ?
 
私にとってはきっと怪異よりもその霊能者の方が怖い存在だったのだろう。
殴られたり蹴られたりというだけでは済まない気がした。
だから死んだ気で立ち止まり振り返ってみた。
そうしたら本当に大した事は無かった。
拍子抜けするほどに恐怖は微塵も感じなかった。
そして追いかけてきている筈の怪異もその場で立ち止まり唖然としている様にも見えた。
そこから学んだことは、怪異も元々は人間だという事と恐怖というものの殆どは自らが勝手に作り出している妄想なのだという事。
追いかければ逃げるだろうからその方が面白い・・・。
逃げれば恐怖は増していくだろう・・・。
元々が私と同じ人間なら怪異が考える事もその程度に違いない。
そもそも人間には後ろに眼は付いていない。
つまり逃げている時には後ろは全く見えないのだ。
何も見えないから勝手に恐怖が増幅していき恐怖で身体も動きが悪くなる。
あとは捕まるしかないということだ。
しかし一度立ち止まって180度向きを変えて背後を見たらどうなるのか?
確かに相手が逃げるのを止めた時、一気に形勢が逆転する事もよくある事だし、猛獣に題しても背中を見せて逃げれば、それは自らの弱さと敗北を認めた事になってしまい確実に襲われてしまうという。
あとは大怪我させられるか、食われるかのどちらかだろう。
だから私は逃げるのを止めた。
デメリットばかりでメリットは何も無いのだと悟ったから。
そして、これはもしかしたら日常生活の中でも同じ事が当てはまるのではないか?と感じた。
仕事だったり対人関係だったり、日常生活の中にもつい逃げ出したくなる時がある。
勿論、逃げられるのなら逃げれば良いと思う。
しかし逃げて良いのは逃げる事で苦しさや悩みから解放される場合に限られるのかもしれない。
つまり逃げるという行為は逃げきれる場合にのみ有効だと思うのだが逃げる事で全てが解決する事など殆ど無いのではないか?
単なる先延ばしになってしまい更に事態をややこしくしてしまうのではないか?
そこまでは何となくわかったような気がしたが実際には難し過ぎるかもしれない。
だから怪異からは逃げず、日常生活では逃げもうまく使う・・・。
それが良いのかもしれない。
エッセイっぽいのを書いてみたかったのだが
私は一体何を言いたかったのだろうか・・・。

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