寮生活初夜に聞いた不思議な話【怪談・怖い話】

2024年6月12日 14:13

すごく怪談らしくて気に入ったので記録しておこうと思う。
未成年の飲酒が出てくるけど、何十年も前で時効だから見逃してやってほしい。それと、説明していたらやたら長くなった。

祖父が都会の大学に進学し、寮に入ることになった時の話だ。祖父の父親はこう言った。
「都会には若者を堕落させる誘惑がいっぱいある。田舎から出てきたばかりの1年生なんて、カモにされ放題だ。悪い友達に誘われても、絶対に応じるな」
祖父はこの言葉を胸に刻み、注意深く行動しようと心に決めた。

寮生活が始まって数日後、大学の入学式があった夜に事件は起きた。祖父は他の部屋の先輩から声をかけられた。

「新入生の歓迎会をやるから、夜11時に俺の部屋に集合な。飲み放題だぞ」
飲み放題と言われても祖父はまだ18歳の未成年だ。
父親の「悪い遊びに誘われてはならない」という注意を思い出し、恐る恐る断った。先輩は食い下がる。

「一晩くらいいいじゃないか。寮の皆と友達になれるしさ。飲みたくないなら飲まなくていいし、食べ物もいっぱい用意するし」

祖父は心が揺れたが、最初が肝心と思い直し、「でも、俺はいいです」と固辞した。先輩は「そうか」と少し残念そうに引き下がった。

その夜、祖父は真面目に机に向かって勉強していた。だが、先輩の部屋からはしゃべったり笑ったりする声が聞こえてきて、内心うらやましくて仕方がなかった。

夜12時が近づくと、先輩たちが「やっぱり一緒に飲もうぜ」と部屋に乱入してきた。狭い部屋にぎゅうぎゅう詰めになったが、祖父は嬉しくなって皆と一緒にしゃべったり歌ったりしていた。

12時になった時、不思議な音が聞こえ始めた。「バターン」というドアを開け閉めする音が規則正しく響く。それは確実に近づいてくるようだった。

祖父は不安になり、先輩に「誰か出入りする音がしてますね」と尋ねたが、
「まあ他の部屋でも飲んでるから気にするな」と言われた。しかし、その音はどんどん大きくなり、近づいてくる。

祖父は「近づいてきますよね！」と焦って先輩に訴えたが、「気にするな」と布団を頭からかぶせられてしまった。

祖父は布団の中で嫌な気持ちと恐怖心でいっぱいだったが、やがて先輩が布団をめくり、「やれやれ、今年も終わった」と祖父を引っ張り出した。

先輩たちによれば、この寮には「新人さがし」と呼ばれる何かが住み着いていて、年に一度、4月の入学式の夜に寮の各部屋のドアを開けて新入生を探すのだという。

姿は見えず、ただドアが次々と開いて閉まる。鍵をかけていてもドアは開き、閉まった後には鍵がかかっている。

それだけで他に害はないが、一人で見ていると怖すぎるので、皆で集まって騒いで理性を飛ばし、その部屋のドアが開けられるときは布団や何やらをかぶって見ないようにしているのだという。

先輩曰く、「最初にネタバレすると『正体を見てやる！』と言って部屋から出て行った奴がいたが、廊下で消えて戻ってこなかった」とのことだった。

祖父は翌年から新入生に酒を飲ます側に回り、彼らに同じ体験をさせた。今でもその時の仲間たちとは親友だ。祖父がこの話をしてくれた時、私は何とも言えない不思議な気持ちになった。

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